1340金色の夜ごと人は懐胎す原発なき世へ火灯す言葉(注:土曜の朝には驚くような秀作が並ぶ)
1341楢の葉は浪の入り江に輝いて戻ってゆくよ大きな野へと
1342ふかぶかと緑に眠る学び舎に声は戻らず毒は降り積む
1343歌を連ね思い連ねて千首越え無粋な旗では集まらないね
1344何故知らぬ文化を壊すと宣はれ怒り鎮まらぬ今日の我なり
1345朝起きて瓶をふるとしゅわしゅわって乳酸菌がお早うって/うち帰り瓶をふるとしゅわしゅわって 乳酸菌がお帰りって/寝る前に瓶をふるとしゅわしゅわって 乳酸菌がお休みって
1346無限にあると思われし22年度産玄米大袋 残り1kg醸し尽くして
1347泥くさく巧まず思いを真っ直ぐに述べれば三十一字の不思議
1348巧拙を言わず想いを文字にする三十一文字に通え言霊(1357へ返歌)
1349言霊の光りは魂より出ずれ風流風情はうわべと見ゆる
1350この世ではねじくれ心も無常なりこころ乱さず慈悲の種を蒔け(1322へ返歌)
1351何をもて慈悲の心と散りばめぬ水も沃肥も果つこの地にて(1360へ返歌)
1352高圧除染で皮剥け幹白き柿の木の姿ここにも原発の罪
1353何故他人(ひと)の不幸が悲し己が身の悲しみまでも溢れさせつつ
1354大切な友に笑顔が戻る日を望み待ちわび生き抜く今を
1355無力なり寄り添いたくも寄り添えぬ心を寄せつつ涙する我
1356痛々し叫びの底の血の匂い君の心の傷やいかに
1357あやかしの午後の陽射しの只中で言葉を紡げ無常を放て(1335「あやかしの言葉の露の荒魂を鎮めん集めよ真の言葉」へ返歌)
1358蝉時雨〈その七日〉の命[めい]を汲み月渡る我の頬に風あり
1359街に里に芙蓉向日葵百日紅咲くが如くに人は集える
1360セシウムよりストロンチウムより怖きもの諦め強いる政(まつりごと)人
1361かにかくに人は集いて流れるを無き事とするそは人たりうるや
1362夏真昼街の路上は灼けてあり歌は静かに空に満ちゆく
1363いしづえとも犠牲とも言はん陰に沈むその魂を言の葉とせよ
1364発展のために奴隷が必要と称う心は今原発に
1365魂に蓋をされた強いられた欲望だと知りもせずに(1364へ返歌)
1366ポスターの喉を震わす南風音のない声しかし聞こえる
1367その時刻朝を信じて顔あげた人を殺した悪魔の光(注:ヒロシマ・8/6に)
1368足元にあると知りおり原爆に焼かれしひとの声共に上ぐ
1370広島のデモをなじるひとびとよ泣き寝入りこそ彼は望めり
1371その刻に蝉時雨のみ許されて人は抉られよ罪深さより深く
1372かの火より選び取りし埋み火は平和の火ならぬ戦いの火
1373ヒロシマとカタカナで書くあの日から核兵器こそ凍らせるため
1374人去りし原発の村の神は悲し笛や太鼓の夏祭りも消え
1375古代よりこの土地まもりし神なれどほんたうは人をまもるため居る(1374へ返歌)
1376操れぬ核を抱きて在るこの国に危機が起きてもバットマンは来ず
1377現実の危機を救うはバットマン本当は我らの心(なか)に在るはず
1378一刻も早く止めてと亡き人の声何も変わらぬヒロシマの朝
1379連綿と紡がれたいのちの絲無惨にも断ち切りし原子の光(注:8月6日 広島原爆記念日によせて)
1380時止めよ原子の光が夥しい生命(いのち)かき消すその一瞬を(注:67年前の8月6日午前8時15分)
1381偶然に曜日が重なりし今日は67年前広島が慟哭せし日
1382夾竹桃の色にヒロシマの怒りと悲しみが折り重なり
1383夜明け前峠三吉のリフレイン「くずれぬへいわをへいわをかえせ」(注:8月6日未明に)
1384幼な子に頬撫でられてその顔に我が進まんとする道を問ふ(1339「ちいさな手で我の顔をさわりし子をじっと見る 我は何をすべしかと自らに問いかけながら」へ返歌)
*肩組みバージョン(前の人の五七五に次の人が七七を続けます)
1フクイチや首相飛び込め水の音
2毒の青さに沁みてただよへ
3福一の小島の磯のセシウムに
4我ぶち切れて野田にかみつく
5セイサンな事故の責任誰がとる
6強きみにくき電獣たちよ
7火蜥蜴は子供の遊びおまえもか
8尾を燃やすのは神も消せぬ火
9永田町『国民』らしく理路整然
10粛々われらを死の竈へと
11自分だけ逃亡不可能放射能
12ゆえに言うNO!原発にノー!
13右左反だ脱だと三白眼
14いまの時流の先に出ようと
15民の心の流れも読めずに
16いやなものいやと言おう原子力
17六十兆の赤信号灯らせ
18戦死者も墓より出ずるアポカリプス
19安眠妨害赦すまじ
20渇けし者よ、来たれ、飲め、いのちの水を、いのちの言葉を
21黄金の果実も敵わぬ ひとしずく
22人かしずかず 「否!」の紫陽花
23不知火の祈りは今こそ届くのか
24原発の 代替案も 利権ずく
25代” “利”の意/知らぬ者らが
26不死鳥の 想い忘れて 大飯町(注:不死鳥は福井市のシンボルであると共に、戦中の空襲に続き、福井震災から甦った福井は、災害の怖さを知っている筈なのにと)
27活断層の 眠る海原
28チェルノブイリの悲劇さえ無視して
29焼け爛れまづ垂れ落ちよ欲の皮
30また熾すプロメテウスの驕りの火
31食べて応援 がれき拡散 消費増税
32聞く耳を持たぬどぜうに返歌など
33期待せぬとてついつい待たなむ
34黄金(こがね)の音には返歌ありしを
35あり?オレ?はぁムリ いまそれどころじゃねぇ
36ふるさとの山に向いて線量計
37黒南風の辻々にこゑ湧きあがる
38本気なら尽きぬアイデア見せるデモ
39「見えない」を「存在しない」と君は言い
40砂漠にすれば除染は完成
41人絶えしこの島守る核兵器
43民にこそ狙いさだむる54基
44国憂う 君を憂える 家族か
45汚れた故郷で とどまる姿に
46国旗という その旗は血に塗れ
47国歌という その歌は恨みに塗れ
48死んだ筈だよお富さん
49引鉄を 引く指ふたつ 父は折り
50国による 虐殺助く 無関心
51原発は 遠くに在りて 使うもの
52悲しく歌うな 故郷の歌は
53明日を生く 希望と権利の 奪回まで
54避難した 海を挟んだ そこは大間
55間[ま]を繋ぐ歌は『毒封ぜん!』と
56福島に 残る苦しみ を思う夜
57またたきと吐息とを我ら歌に
58想像してごらん 核のない世界を
59怯えなく 土と遊べる ふるさとを
60想像してごらん 核のない世界を 夏休み 子どもらは 海や川で泳ぎ、野や山で セミやトンボを追いかけ 思いっきり遊んだ後に 夕焼けに顔を染めながら 家路に向かうだろう。
61想像してみよう 核のない世界を。 チャイナシンドロームはなく上には空があるだけ、 想像してみよう簡単だから。 みんな今日のために暮らしていると想像してみよう。
62想像してごらん 核のない世界を 信じていたことが叶ったこと忘れたの?今は辛い苦しい痛む心を抱えてる。でも いつか終わる時が必ず来ることを知っていた。信じて希望することを忘れてはいけないんだよ。信じているなら あの美しい日々は必ずやって来るのさ。
63夢が覚めたらまた悪夢のなか
64哀しきは何万年の半減期
65原型もとどめておらぬ科学の粋(これに付けられた句は66~70)
66酩酊状態 抜け出せぬわが首相
67現れたるは盲信の果て
68人智の及ばぬ悪鬼の四散す
69それは〈酔〉か?と問うて止まぬ
70ひとの叡智の愚かなりしが
71屋根飛んだ核の宝庫や浅ましき(これに付けられた句は72と73)
72水に潜みし悪魔そのもの(これに付けられた句は74)
73色とりどりの死の種を蒔く
74ぽっかり開いた地獄の釜
75鉄柵の重さ堪える炎天下
76共に叫べぬ故の無表情
77溢れ来る本能の叫び抑え居る
78フクシマの空に鮮血めぐりて
79命の音に刻みし半減期2万4000年の刻印
80人絶えて後も生命を脅かす
81「主催者」も「鉄柵」もない
82満開の桜の木の下の、アノニバス