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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「詩と朗読と文学トークの会」in熊野市立文化交流センター(一)

「詩と朗読と文学トークの会」in熊野市
本日、熊野市立文化交流センターでの「詩と文学とトークの会」を無事終えました。人前で話をするのが苦手な私ですが、心配よりも、熊野の地で熊野の詩を朗読出来る喜びがまさっていたようです。朝からあまり緊張感なく過ごせました。昨年9月にオープンしたばかり交流センターのホールは、設備も素晴らしく、各所の造りも人間味を感じさせる温かなデザインで、ホールも一人一人の顔が見えるくらいの、程よい収容人数でした。関係者の方々も色々気配りして下さり、講演前には新鹿特産の柑橘類「新姫」のドリンクやお菓子を差し入れてくれました。また集客にも力を注いで下さったおかげで、100名以上の方々が集まってくれました。開演前に詩集を買ってくれた方が、「自分は新鹿生まれの新鹿育ちなので、新鹿がどんな風に作品化されているか、興味があって来たんですよ」と言われたので、嬉しく思うと同時に、正直ややプレッシャーも感じました。(新鹿は歴史を詳しく知ると、文化的に大変開明の土地です。また私もよく調べて、このブログでもあらためて紹介したいと思い
ます。)
さて、1時半に開演。館長さん、今回のプロデューサーの中田さんのスピーチの後、まず前半は私が講演と朗読、後半は文芸ジャーナリストの酒井佐忠さんの講演というプログラムです。熊野の詩集だからということでか、また中田さんの力作のパワーポイントの威力もあって、全体として観客がとても集中して聴いてくれているのが分かりました。私はまず今回の詩集「新鹿」が、これまでの私の詩集よりも何故分かりやすくなっているのか、を話し、また熊野の詩を書くようになって、自分の日本語がいかに自由になったかについて語った後、そうした「自由」を実証する作品として、「花ノ窟」を読み、それから「鬼ケ島」を読みました。鬼ケ島は朝酒井さんと散歩をしたので、より鮮やかに、脳裏に風景を浮かべながら読めたようです。それから後半は、中上健次の日本語に出会ったことの衝撃や、新鹿の開墾地を訪れた時の感慨を語った後、「新鹿(一)」を読んで終わりました。続いて酒井さんの講演でした。詩集「新鹿」をめぐって、最近とこれまでの私の仕事にも触れながら、真心を
こめて語って頂きました。詩によって「今ここ」を取り戻し、他者に「同苦」するために、また詩を自閉させないために私が今試みていることに対する共感を熱く語って貰い、じーんと来ました。野樹かずみさんとの短歌と詩のコラボや、「東柱を生きる会」にも言及して頂きました。最後、大変期待をこめた形で話を結んで下さったので、本当に励まされ嬉しかったです。予定の3時をやや過ぎて終演しましたが、出演者である私自身が色々考えさせられたり、胸を揺さぶられたりした、あっという間の一時間半でした。しかし私は満足していても、お客さんはどうだろう?と案じる間もなく、出口で詩集を予想以上に買って貰って、大感激でした。サインをする間も、色々温かな声を掛けて頂きました。熊野にお嫁に来た方、中上さんと交流のあった方、新鹿近辺の郷土史家の方など、熊野に生き、熊野を愛する情熱がそれぞれに伝わって来で、20部を越える「新鹿」が、それら熱き熊野人たちの手に渡って行きました。この詩集を出して良かったと、何だか初めて、本当に実感出来た気がしまし
た。