外壁にはたくさんのタイルが
(寺山が高校生の時にたしか好きだった)花札のように埋め込まれていました。
その一つ一つには絵や写真が描かれていたり、
短歌や文章の一節が記されたりしています。
あらゆるマルチの才能で現実と拮抗する虚構世界を創造した天才の世界を
美しく象徴している外観だと思いました。
内部のメイン展示室は、教室のように木の机と椅子が並んでいて
そのどれかに座ると、ふいに机の上に寺山の人生を紹介する
とても美しいビデオが投射されてくる。
また各所で関係映像を見ることができたり
資料を集めたブースでもアーカイブを見ることが出来るようになっていました。
私も大学生の時、京都の太秦で初めて天井桟敷の演劇を見ました。
野外劇場前の長い行列に並びながら白い息を吐き(真冬でした)
「別の時間」が現出するのを胸を高鳴らせて待っていました。
今回記念館の薄闇の中で様々な懐かしい映像や言葉にふれながら、
久しぶりあの頃の、未知との出会いに憧れた自分にかえったような気分になりました。
この博物館はまさに、寺山の世界を一つの精神の糧として持つ者にとって
寺山体験という原体験が「かくれんぼ」してくれている空間だと思います。
それでは次は少し寺山の短歌について書きます。