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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『環』で詩論の連載が始まりました

『環』(藤原書店)で詩論の連載が始まりました。Image1193_2
「詩獣たち」というタイトルで毎号10枚程書きます。
今号(44号)の「悪霊的な夜より黒い光のうたを」はいわば序章です。
尹東柱パウル・ツェランの詩を取り上げています。

詩獣たち? とドキリとされるかもしれません。
ここでは詩人たちの生涯あるいは作品を追いつつも
詩を詩としてこの世に立ち上げ、輝かせてきた根源である
詩的情動に焦点を当てていくつもりです。

だから詩獣。
傷つき、うめき、うったえ、うたい、他者と自己を打つ者。
現在の言葉の闇を照らすかれらの目の光や
うたの消えた闇に立てられる爪あと
そして詩という最後の共同性をもとめ
傷ついた身を起こす比類なき筋肉のうごめきを
私なりに伝えていきたいと思っています。

詩には、人知れず被った暴力によって傷ついた者たちの呻きがひそむ。私たちが聞き届けようと身を乗り出す時、闇から光へ、あるいは闇からさらに深い闇へと身をよじる獣たちがいる。かれらは私たちに応え、私たちを呼ぶ。傷を負ったまま天を見上げ、声なき声で、蘇った鋭い痛みに呻きうたおうと、身じろぐのだ。そこに一瞬輝くのは、この世で唯一天を見上げる獣である人間の原形としての、痛々しい輪郭である。

また今号の特集は劉暁波氏。
「つまり劉氏のノーベル平和賞受賞をどう受け止めるべきか。これ自体がわれわれにとって一つの大きな課題となっている。これは「中国とどう向き合うべきか」というわれわれ自身の問題なのである。」
投獄されても詩を書くことをやめず、「私には敵はいない」と告発者側の人格をも尊重する劉氏は、まさに本物の詩人です。
妻劉霞さんとやりとりした愛の詩が、双方とも掲載されていますが
どちらからもつよい感銘を受けました。
この特集もこれからじっくり読んでいきます。
また朴才暎さんの旅のエッセイも始まりました。