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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

クリプタ

今日、京都に帰ってきました。Image616
朝、昨夜までの雨とは打って変わって、晴れ上がった東京の空の下を
中央線で新宿へ。
そこである人とお会いしてから、四谷にあるカトリック教会へ。

じつは今日は亡父の命日だったので、
教会の地下にあるクリプタ(地下納骨堂)にお参りしました。
クリプタには事務室の方からもお御堂からも行けるのですが
何となくお御堂に足が向きました。
螺旋階段で降りていきながら眺められる
美しいステンドグラスを久しぶり見たいと思ったからです。

お御堂ではちょうどミサが執り行われていたところで
外国人の神父が読みあげる
かすかに外国語訛りの聖書の言葉が
天井にかすかに反響していました。
昼間にしては意外な数の信者たちの背中はやはり神々しく思え
私も足音やキャスターの音も立てないように注意して
階段への扉もそっと閉めました。

太陽の高さがちょうどいい頃だったのかImage618
キリストの物語を描いたステンドグラスは
燦然と輝いてとても美しかった。
しかし足元にもご覧のような宝石のような反映の光が。
何だか降りるのが勿体ないようにも思えました。

クリプタには誰もおらず、とにかく静か。
やはりここでもキャスターの音は
死者たちの眠りを妨げるようで気が引け
重い荷物を抱えて歩きました。
日光が永遠に当たらずこもっている空気には
強い百合の匂いが染みています。
クリプタ内の小さなお御堂に生けられたものから発散しているのですが
百合の匂いはおのずと父や母の葬儀の日の記憶を
私の中から誘いだします。

父が亡くなった10年前の今日という日にも
真っ青な空が拡がっていて
しかし風が強かったのを覚えています。
讃美歌も風に吹かれてどこかに行ってしまうような
そんな悲しみがかなり長く続きました。

しかし10年はやはり一昔。
今は死後の父と母さえイメージ出来るようになっています。
きっと二人とも、
生からの別れという最大の苦しみから癒された
思い煩うことない光となって
いっしんに神に祈りながら復活の時を待っているに違いない、と。
そのように思うのは生者の身勝手でしょうか。
見回せばクリプタには
何百人という光になった死者たちが眠っていました。