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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

リルケの詩「薔薇の内部」

リルケの詩は本当に美しいです。
久しぶり高安国世訳の「新詩集」をめくってみましたが、
すべての言葉が、つよい輝きを放っています。
詩人として生涯をまっとうしたリルケですが、
時に孤独や絶望が襲ってきても
詩と生のゆたかさに対する信頼は揺らぐことはありませんでした。
次の詩は、私が大好きな詩です。

薔薇の内部
             ライナー・マリア・リルケ
        

どこにこのような内部を包む
外部があるのだろう。どのような傷に
この柔かな亜麻布はのせるのだろう。
この憂い知らぬ
咲き切った薔薇の花の
内湖(うちうみ)にはどこの空が
映っているのだろう、ごらん、
薔薇はただそっと
花びらと花びらを触れ合わし
今にも誰かの慄える手に崩されることなど知らぬかのよう。
花はもうわれとわが身が
支え切れぬ。多くの花は
ゆたかさあまって
内から溢れ、
限りない夏の日々の中へと流れ入る、
次第次第にその日々が充ちた輪を閉じて、
ついに夏全体が一つの部屋、夢の中の
部屋となるまで