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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

東柱の話(四)

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昨年4月、桜が終わり京都が緑ゆたかな季節を迎え始めた頃、
私は久しぶり比叡山に登りました。
その時、なぜか乱暴にも東柱にこじつけてしまった、「不思議な」体験をしました。

まだ、花がきれいだなーっと余裕があった段階ですから、麓付近だったと思います。
写真のような花に出会いました。
紫のつつじ・・・珍しい。
もしかしたら、チンダルレ?!
早合点の私はひとりでもりあがりました。
チンダルレとは、朝鮮半島で春の訪れを告げる花として知られる、
カラムラサキツツジ(和名)です。
そう短絡したのは、この比叡山の麓に、尹東柱が下宿していたアパートがかつてあり、
彼が野山を歩くのが好きだったことを、昨年上梓された『尹東柱評伝―空と風と星の詩人』(宋友恵著・愛沢革訳、藤原書店)で読んだばかりだったからです。
京都にいた時はケーブルカーで比叡山を越えて琵琶湖にも行ったそうです。

なぜこんなところにチンダルレが?
もしかしたら東柱が未来への伝言として苗を植えた?
私は空と風と星の詩人が夢見た未来の花をみているのかしら・・・

早くも相当疲れていたようです。
冬の運動不足のためにかなり息切れがする中、酸素不足の頭の中で、
切なく淡い幻想が生まれたのでしょう。

もちろんチンダルレではありませんでした。
日本にはほとんど自生しないのです。
詳しい人に訊いたら、本州の中部、四国地方で咲くコバノミツバツツジではないか、ということです。