先日、友人といっしょに、まるで鏡のように美しい池の前に佇みました。
来年こそは、この池の眸のような、澄んだまなざしに見つめられて恥じない一年でありたい。
鏡池
河津聖恵
池は今 澄みわたる眸となり
もう一つの冬を底深く見つめだす
庭園のベンチに並んで腰をおろし
きれいねえ 声を思わず合わせた
二人の眼差しはそのまま
凜と木々を映す水面に吸い込まれる
この美しさは
世界の沈黙に煌めく涙の光 あるいは
まばたき一つで
消えてしまう流れ星の迅さ
奇跡的に反射も翳りもない水の
緑と青に夢のように呼ばれた私たちは
冷たく響く鳥の声の「永遠」に
肩をよせあい黙りはじめる
あと少しで鏡は薄闇に溶け
夜が訪れるはず
空は魂を掠め 落ちてくるのか
私達の間にも闇が生まれ
不信と孤独の青白い鬼火が
ちらちらもえ出るだろうか けれど
きれいねえ
今 共に見つめる鏡の揺るぎなさに
眼差しは
さらに高く時を越えていくもう一つの冬を追い
未来へと確かに暮れ残る