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詩空間

河津聖恵のブログ。この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

6月21日ゲスト講義in横浜市立大学(二)

テーマは「詩を導く土地」。Image1453
旅先の土地で見聞きしたことによって、詩を書いた経験を話しました。

2008年に『新鹿』、2009年には『龍神』を出した経緯。

2007年9月に田辺に住む倉田昌紀さんから
思いがけないオファーをいただいて、
始まったフィールドワークだったこと。

突然宅配便で小包みが来たこと。
その中に私の詩集が何冊かと、手紙と、お菓子が入っていたこと。
手紙にある通り、詩集にサインと言葉を書いて送り返したところ
折り返し電話があったこと。
「ぜひ、僕の好きな故郷である紀州に来て下さい」と
非常に明るい声で誘ってもらい、心が動かされたこと。
(鈴の形のカステラのお菓子を食べちゃったから、と話したところ、ウケたようです)

私はこれまで10冊の詩集を出していますが
その中でもこの二冊は特別であること。

紀州・熊野の自然は
それがどう素晴らしいか分からないくらい素晴らしかった。
その感動を京都に戻ってから言葉の山に投げかけたけれど
京都に戻ってから思いだした記憶の中の紀州・熊野は
現実よりももっと輝いていたこと。
その理由はきっと
それがどこかで言葉を通過してすでに虚構となっているからだ──。

虚構、物語。
私たちの中でそれがおのずと作られている不思議。
そこでは、言葉は自由になる。
意味やイメージの重さから逃れ
リズムを取り、読みやすくなる。

あと観光とフィールドワークの違いなども話しました。

しかし私が一番話したかったのは、「新鹿」について。

1980年アメリカから帰ってきた中上さんが精神的に疲れて
自給自足をしようとしてひきこもった山あいの土地。

熊野市からさらに山の方に入っていって
誰もいない心細い山道やトンネルをいくつもくぐって
散々迷って聖地?を探したこと。
道を尋ねた地元の方が親切にも軽トラックで案内してくれたので
ようやく辿り着いたこと。
海鳴りのきこえる開墾地にぼんやり立っていると
当時中上さんに農業の指導をされた方がたまたま出てきて
作家が植えた椿の木や水仙や柿の木などを指さしてくれたこと。
早春の夕暮れの風にそよぐ花や木を見つめながら
ひととき作家の何かに出会ったような気持になったこと。
巨体をまるめて水仙を植えている姿が幻視されるようだったこと。
その時の何とも言えない風景の記憶から、あとで言葉が次々生まれてきて
二篇の連作「新鹿」になったこと。

そんなことを話した後で
「新鹿(一)」「新鹿(二)」を朗読しました。
あの日の夕闇が濃くなるにつれてぼうっと灯るようだった
黄水仙たちを思い出しながら。
そう、あの黄水仙たちについて話すことができた時
今回の講義の目的が果たせた気持にもなりました。