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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

奈良 人権・部落解放研究所による要請文

「奈良 人権・部落解放研究所」による本日付の要請文を送っていただきましたので、アップいたします。今回の除外問題は、教育の無償化や人権教育を推進してきた運動や歴史をないがしろにするものでもあるのだと感じました。*****************************************************************************************************************

内閣総理大臣 鳩山由紀夫 様
文部科学大臣 川端 達夫 様
   
                    財団法人 奈良 人権・部落解放研究所

財団法人 奈良 人権・部落解放研究所は、政府が打ち出した「高校無償化」制度において朝鮮学校を即刻対象とするよう強く要望いたします。
 
私たちは、すべての人の人権が真に尊重される社会の実現に向けて、教育・宗教・企業・行政・NPOなど、さまざまな分野のみなさんと連携協力して活動しています。

「高校無償化」制度は、現在の政権発足当初より朝鮮学校など、すべての外国人学校も対象として想定されていました。私たちは、その制度設計を高く評価してきたところです。

しかし今年2月、法案の国会審議を目前にして、中井拉致問題担当相は拉致問題との関わりから、朝鮮学校を無償化対象から「除外」するよう文部科学相に求め、鳩山首相も「ひとつの案として検討する」とコメントされ、「除外」の方向で最終調整をされていることが明らかになりました。以来、その政府方針に対して抗議の声や無償化適用を求める要請文が殺到したにもかかわらず、高校無償化法案は可決され、朝鮮学校を対象にするか否かの判断は4月以降に先送りするという「当面除外」を決定されました。

 拉致問題とは関係のない在日三世・四世の子どもたちの学習権を、拉致問題という外交問題を理由に政治的に排除していくことは、日本政府による在日コリアンの子どもたちへの差別と言わざるを得ません。

 日本が批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約(第27条)や国連子どもの権利条約(第30条)は、民族的マイノリティがその居住国で自らの文化を享有し、同じマイノリティの人々とともに言語を使用する権利を保障しています。

 また、日本国憲法は、第26条1項(教育を受ける権利)および第14条1項(平等権)の各規定によって、朝鮮学校に通う子どもたちに「普通教育を受ける権利」、「マイノリティが自らの言語と文化を学ぶ権利」を保障しています。

 さらに3月17日には、国連の人種差別撤廃委員会が、日本の人権状況についての見解をまとめた報告書を公表し、在日コリアンや中国人の子弟の学校が「公的支援補助金などの面で差別的扱いを受けている」と指摘し、朝鮮学校の除外問題についても「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」の一つとして言及しました。そして、これらを踏まえ、教育の機会を差別なく与えるよう日本政府に勧告しています。

朝鮮学校の「無償化」除外は、国際的な人権基準、そして我が国の教育制度にも適合し得ないというだけではなく、教育の無償化を推進してきた部落解放運動や同和教育の歴史と教訓をないがしろにするものです。

 今、真に求められる判断は、文部科学省が当初から描いてきた「家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会」の実現という高校無償化制度の理念を貫徹し、すべての子どもたちの未来を保障する教育制度を豊かに創造することです。政治的思惑から人権教育の理念がそこなわれることがあってはなりません。

 今後の「第三者機関」による検討が、人権教育の理念を実現するために公正に機能するものであることを願って止みません。

                 2010年5月14日
                 財団法人 奈良 人権・部落解放研究所理事長
                                 寺澤亮一
                                     担当 大平和幸
                                                (E-mail;nakama@pearl.ocn.ne.jp)