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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

朴才暎「歌、美しい歌」

朝鮮学校無償化反対アンソロジー』の掉尾を飾る
朴才暎(パク・チェヨン)さんの詩を紹介します。

朴さんは、青森生まれ。
東京中高級学校出身の在日コリアン二世。
藤原書店から自伝エッセイ『ふたつの故郷(ふるさと)』を出されています。

私たちは、このアンソロジーを
詩が持つ本来の力、つまり
人の心を打つ、心に訴える「うた」となるようにという思いで編みました。
しかし編集を練るには時間が足りなく
掲載はほとんど寄稿順となったのでしたが、
まるでアンソロジーの「うた」という趣旨を体現するかのような
朴さんの作品で締められたのは、
小さな奇跡かもしれません。

そして私の今の思いをも
含みこんでうたってくれている歌です。

*ハングル詩のところ、行頭がそろいませんでした・・・

                                                
歌、美しい歌
               朴才暎

私は 美しい歌の中に 産まれた。
アリラン 津軽じょんがら 「めだかの学校」、
クレメンタイン(の歌) アメイジング(グレイス)
そして時には コルトレーン
「何語だって いいはんでの。
 どこのだって よかけんねー!」

とびっきり 楽しい歌に 出会ったのは
朝鮮学校の庭。

          ??? ???
       (幸福って 何って)
         ? ?? ???
       (誰かが 問えば)
     ??? ????
       (私たちは 答える)
     ??? ??
       (幸福は 私たちのこと)
     ??? ???? ??? ???
       (この地(朝鮮)に 新世代として 育つ嬉しさ)
         ??? ??? ?? ???
       (ここより よいところは他にない)
         ??  ??? ????
       (ああ 私たちは 幸せ)

初めて 聴いた歌
きらきらした まなこの
少女少年たちの 全身からのハーモニー
自らを 日本の 植民地の軛から解き放ち
廃土の上に 自分たちの国を立ち上げる
悦びの歌 希望の歌。

私は 美しい歌が ききたい
私は 美しい歌が 歌いたい

沈んだ心を励まし
ふてくされた心を慰め
明るく力強く鼓舞する
やさしく美しい歌

怯えた心
凍えた口
強ばった躯を
伸び伸びと 解き放つ
幸せな歌を。

嗚呼 それなのに
私が生まれ育った この地(日本)の
政治屋たちの
作詞 作曲 自唱の歌は
ひどすぎやしないか?
恥ずかしくはないか?
黒い鴉の 一声にさえ及ばぬ
稚拙で 卑しい歌が
『日本の歌集』に しっかりと 収録されるのは。

「どこのだって えぇやないの」
       (えぇ 歌なら)
「It`s OKって ならへんの?」
       (英語の歌は 大好きで歌うんやからサ)

表紙は 日の丸印
中身は「君が代」やないと 金は 出さへんやなんて
恥ずかしないの?ケチくさい!(橋下はん)
朝鮮学校の『美しい歌』だけは禁じます」って
おかしくないか? 歴史は学びましたか?(中井さん)

「歌集」の奥付は…おっと!
1910年8月22日なら まだしも 今は
2010年8月じゃないですか!

     *大人たちの愚しさ、偏狭さには 目を覆いたくなるばかりです。
        だからこそ、新しい人たちの柔らかさ、清らかさは
        私たちが冐すことなく護らなければならない「未来の財産」であるのに。
        万感の「ゴメンナサイ」の代わりに、私たちは歌を謳います。