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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

熊野・詩・うつほ

熊野・詩・うつほ

詩とは、なんでしょう?不思議なことに、熊野でものを考えていると、いつも自然と私は、風景そのものへとそう問いかけ始めるようです。「今ここを生きるとはいかなることか」。薄い雲の中から光が問いかけてきます。地上で私の魂は答えようと陰影を作ります。「生きること」と「詩」とはいつしか重なりあい、海の青に山の緑に溶け込んでいきます。風景から次のことを知らされます。詩とは、すべての他者の言葉との関係性へとひらかれていく言葉。どんな言葉よりもひらかれることで、言葉という存在の本質を、痛々しい迄に実現する言葉。消えゆくように、あるいは消えながらも、そして消えるということを通して輝きだす言葉。すべての言葉を幻視し、すべてへと透き通り、すべてに共振する言葉。私たち、言葉を持つ動物である人間の最奥にある、日常においては眠るウイルスのように仮死状態である「うつほ」の生命を、ふたたび蘇らせる言葉。「うつほ」とは死せる空虚や無ではなく、きっと私たちがそこでふたたび繋がりうるための、大文字の他者のいきづく世界の奥処なのです。

「宗教」=religionには、「ぱらぱらだった者を再び結び付ける」という意味があると聞いたことがありますが、恐らくその「共有点」こそが「うつほ」ではないのか、と。