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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

80番目の作品

沖縄の高良勉さんから、
「もう間に合わないから参考までに」と
アンソロジーへの参加作品が送られてきました。
(ブラジルにいらしていて締め切りを逃したそうです、残念!)

既発表のものとのことですが、
この「ザン」のようなおおいなる海のイキモノを忘れているから
本土の人の心は干上がっているのかもしれないな、と思いました。

海は私たちをつないでいる。
沖縄と朝鮮と日本を共に優しく撫でている。
何も言わなくとも海こそは
ほんとうの叡智をつねにたたえているのではないでしょうか。

 ザン(じゅごん)よ
                 高良 勉  

北海道では雪が降り
クリスマスツリーも点灯された
十二月 台風二七号が
ゴーナイ ゴーナイ 島へ 群島へ 近づいて来る 
ガイア(地球)はのたうち 怒っている
五十余年の人生で 経験したことのない
十二月の台風

ザンよ
ピンクの美しい肌をしたじゅごんよ
辺野古岬の沖 長島 平島 のまわりで
珊瑚礁を破壊し おまえや海亀たちを追い散らし
パイプを打ち込み ヤグラを組んで
ボーリング調査を強行し
軍事空港基地を造ろうとした
我欲・金欲の人間どもは あわてて逃げた 

ザンよ やさしい人魚とも
アカングヮイユ(赤ん坊魚)とも呼ばれる
おまえたちは 数々の 伝説と共に生きている
テーブル珊瑚に腰を掛け 赤ん坊を抱いて
乳を飲ませるという人魚
おまえの肉は不老不死の霊薬で
琉球国王 中国皇帝 日本将軍
たちに税納され 献上されたという
でも 彼らはもはや滅亡してしまった
エケ ザン捕らな カメ捕らな

おまえたちは
人間どもに捕らえられ
いじめられ 殺されようとするとき
ピヒューイ ピヒューイ
と親や仲間を呼んで 大津波を起こし
村を全滅 させるそうな
反対にザンを助けた村は 救われ 繁盛したという

ザンよ 辺野古岬のジュゴンよ 今こそ 
ピヒューイ ピヒューイ と怒り 叫べ
母なる海を埋め立て おまえたちを殺そうとする
神も自然も恐れぬ 傲慢で我欲・金欲の人間どもを
台風や大津波で 滅ぼしていい
人間 地球 宇宙 を殺していく
人間どもを許してしまうなら
私も共に滅びていい
ピヒューイ ピヒューイ