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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

刃としての半島

「古代からもの言わず刃をつきつけた形で半島はあったのである」(中上健次

その海はどれほどに闇を深めていたのでしょうか。
つねに明けない夜であるその海。
(それはどこか、本当にこの世のどこかなのか)
目のない巨大魚と化した軍事境界線
つねに逃走(闘争)している海。
誰も知らない憎悪と不安の血が
闇の中の闇として流されたその時
遙かな私たちは
光の翳りほどのかすかな揺動を感じたのでしょうか。
(それはいつか、本当にこの現在のいつかなのか)
朝鮮半島がふたたび逆しまとなり
眠る私たちに突きつけられていた。

今私たちに突きつけられた半島で
二つの国が夜の闇を濃くしています。
しらじらと明るい島国から見上げるとき
遥かな時からそこには
本当は夜しかなかったようです。
本当は夜しかなかったのです。
私たちはその理由を私たちの中に見ることもせず、
光を我がものとしていると思い違えていたにすぎず──

朝鮮半島に過去の悪夢が蘇らないよう、つよく祈っています。