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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

今必要なのは

「他者はとおい。
他者とのあいだには本当は深い深淵がひらいている。
私は一人で
真実の世界の姿は闇なのかもしれない」

昨日そのようなニヒルなことも書きました。
そのように「深淵」や「闇」と書くことで
どこか安心する自分もたしかにいるのです。

この世は闇だ、
他者とは深淵で隔てられている、と想うことは
この世は光だ、
他者とのつながりにみちみちている、
とするよりも
自分の奥深くが満足するようなのです。

けれど今の社会で私たちをとりまく闇は
熊野の山々の闇とはちがいます。
あのすべての人の魂がやすらかに眠る母胎の闇ではない。
ひとを眠らせない、不安と孤独が主のような闇、
誰も彼もにねばねばとまといついて
他者がただこわい固まりのようにみえる闇。

そう
一人一人を分断するこの粘性の闇に
他者はぬりこめられていくのです。
ともすればそれは
自分の不安と恐怖を投影する影になるはずです。
芒の影が亡霊にみえるように。
少しでも動く者がいると
敵だ!とまるで他者のように身構える自分が
たしかに私の中にもいます。

だから今何よりも言葉が必要なのだと思う。
闇をつらぬく言葉の光、言葉の力が。
そしてそれを感じ取るための最後の感受性が。

あるいは今必要なのは
熊野の闇にも似た真に漆黒の闇なのかもしれません。
こののっぺりとした執拗な闇に決定的な穴をうがつ
何よりも黒い光を
私もまた詩を書くことで探っている気がします。