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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

土曜は野樹かずみさんの歌集の合評会でした

土日は東京に行ってきました。Image1172
彼地は、何だか春が来たような暖かさでした。
実家の近くではもう梅が咲いていました。

土曜は大久保にて、野樹かずみさんの歌集、
本ブログでも紹介した『もうひとりのわたしがどこかとおくにいていまこの月をみているとおもう』の合評会。
版元の洪水企画の池田康さんの絶妙な進行にみちびかれ
歌人、詩人、ジャーナリストの9名が
この破格に長いタイトルを持つ異色歌集の魅惑と問題提起について
三時間、語りあいました。

詩ばかり書いている私にとって
短歌について語り合うのはとても新鮮で刺激的でした。
とりわけ議論が集中して面白くなったのは
この歌集が大胆な破調を試みていること
それと関連して、他者の会話の言葉を直接的に引用していること
の二点です。
野樹さんの師匠でもある加藤治郎さんのアドバイスはさすが鋭かったです。
才あふれる可愛い弟子へ「短歌とは何か」を突きつけつづけられていました。
その愛と情熱にちょっと感動しました。

短歌のリズムや文体とは何か、
短歌のリアリティとは何か、
それは行為よりも表現の次元にあるのではないか・・・

加藤さんの問いは
野樹さんだけでなく口語短歌そのものへの問いかけでもあると思いますが
しかしそれはむしろ、
曖昧な「現代性」にもたれきって
言葉そのもののリアリティへの知覚を失ってしまった
現代詩にとってこそ必要な問いであると痛感しながら
私は聞いていました。

私はもう この歌集で歌人が見ている風景を
まるで自分の見たものとして記憶してしまっていて
客観視できないような気がしていたのですが
他の人々がそれぞれに野樹さんの歌を通してみているものを感じ取れて
この歌集に対する私の視角はさらに拡がりました。
みえない風景がさらにみえてきて、嬉しかったです。

とおくにいる心がふいにひきもどされる背中の子がわたしの髪を噛む

とにもかくにも、野樹さん、お疲れ様でした。
また広島に戻って現実と言葉のリアリティに引き裂かれつつ、がんばってください。