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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

朝鮮学校への「高校無償化」の即時適用を求める要請書

2010年11月29日

内閣総理大臣 菅 直人 殿

文部科学大臣 高木義明 殿

内閣官房長官 仙谷由人 殿

朝鮮学校への「高校無償化」の即時適用を求める要請書

 報道等によれば、文部科学省は、朝鮮学校による「高校無償化」の申請は予定通り11月30日まで受理するが、現状では審査を「停止」することを正式に発表しました。今回の「停止」は、朝鮮半島の西海での軍事的な衝突を受けての判断だと、総理大臣、文部科学大臣官房長官らは発言しています。従来、日本政府は「高校無償化」の適用については、「外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」だと繰り返してきました。今回の「停止」措置は、その見解をくつがえすものです。そのことについて文科大臣は、「平和を脅かす特別な想定外の事態」に対応したのだと説明しました。しかし、これは外交的に解決すべき問題を教育の場へと転嫁する、きわめて不当な判断だと、わたしたちは考えます。

 そもそも、「高校無償化」とは、「国連人権A規約の精神」にのっとって、「国籍を問わず、わが国において後期中等教育段階の学びに励んでいる生徒を等しく支援する」ためのものであると、政府は説明してきました。であれば、文部科学省が制度を適用する外国人学校を公表した4月の時点で、高校段階の課程を有する朝鮮学校は当然そのなかに含まれるべきものでした。にもかかわらず、日本政府は朝鮮学校のみを巧妙に例外扱いし、判断を引き延ばし続けました。まず専門家による検討会議が8月まで続き、次に総理大臣の指示で民主党内での議論をおこない、ようやく11月5日になって適用基準を定めた「規程」が出されたにもかかわらず、また今度は手続きの「停止」です。朝鮮学校の生徒や関係者を愚弄するにも程があります。また、これでは、仮に今後適用が認められても、情勢次第ではいつ再び適用が「停止」されるか分かりません。今回の「停止」は、現行の法令が、いつでも朝鮮学校を「狙い撃ち」できる構造を有していることを露呈させました。そしてこのような政府の一連の措置が、地方自治体の朝鮮学校に対する補助金支給見直しの機運をつくり出していることも、わたしたちは深く憂慮しています。

 一体、今回の軍事衝突と「高校無償化」に何の関係があるのでしょうか。今回の日本政府の過剰反応は、日米戦争のさなかに米国で日系人らが「敵性外国人」として財産を奪われ、強制収容所に送られ、日本人学校が閉鎖された歴史を思い起こさせます。また、冷戦の緊張が深まる1949年、在日本朝鮮人連盟が「反民主主義」的な団体であるとして強制解散させられ、朝鮮人学校が閉鎖され、財産も没収された歴史をも想起させます。こうした歴史的経験や、今回の「停止」に至る一連の措置をみるかぎり、日本政府は、朝鮮学校に通っている生徒や関係者を「敵性外国人」とみなしていると考えざるを得ません。これは「人種、信条、性別、社会的身分」に由来する差別を禁じた日本国憲法ならびに国連人権規約、人種差別撤廃条約にも反する不当な措置です。

 わたしたちは、日本政府に対し、朝鮮学校の生徒や関係者を愚弄しつづけたことに対して謝罪し、即刻「高校無償化」制度を適用することを要求します。

板垣竜太(同志社大学)、市野川容孝東京大学)、鵜飼哲一橋大学)、内海愛子早稲田大学)、宇野田尚哉(神戸大学)、河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、高橋哲哉東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(大阪大学)、仲尾宏(京都造形芸術大学)、中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、布袋敏博(早稲田大学)、水野直樹(京都大学)、三宅晶子(千葉大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学