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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

3月5日講演「原勝四郎が放ち続ける詩の光」in田辺市立美術館

5日に田辺市立美術館で講演「原勝四郎が放ち続ける詩の光」を行いました。 Pc220059_2
一人で演壇に立ち、一時間程度話すというのは、本当に久しぶりでした。

今回はとりわけ、原勝四郎という、田辺が生みだした紀州を代表する画家をめぐって、まさに地元田辺の美術館で、この画家を愛する主に田辺の人々に前で語るので、私なりに下準備はしっかりしたつもりです。

といっても、内容は自分の詩との関係においてという主観を中心にしたものなので、知識の正確さはこころもとなく、また幅広い美術的な観点は手に負えなかったので、そこはこの画家についての第一人者ともいえる学芸員の三谷渉さんにしっかりフォローしてもらいました。

話の内容は
紀州・熊野の詩を書き始めた経緯
2原勝四郎の絵との出会い
3原の絵「江津良の海」と詩集『新鹿』の関係
4今、原の絵に目をこらし、その言葉に耳をかたむけることの意味
5注目した絵について(三谷さんの解説を交えて)

総じて、話の中で私が最も言いたかったのは、原の絵が、見る者に紀州・熊野の波動を伝えると共に、風景や事物と一対一の対話をする力を人に取り戻させるものであるということ。そしてその一対一という向き合い方を取り戻すことは、いわゆる情報や流通によって自分も対象も固有性を奪われつづける苦しみが方々で限界に達している現在の社会において、最も、そして緊急に必要なのではないか、ということです。原の絵の前に立ち止まり、それが放つ固有性の光、魂の光を感受すること−−それは確実に、不吉な地獄の川のように人も物も押し流す現在の闇を照らし出すなにごとかであると、たしかに思うのです。

最後に三谷さんの美しいフルートの伴奏で、三年前江津良の海に立ち原勝四郎の描いた風景を前にした感慨をモチーフにした詩「白浜」を朗読しました。三谷さんはこの詩のために、ドビュッシーのビリティスをイメージされた素晴らしい曲を作って下さいました。あらためて感謝申し上げます。

美しい海を臨む、緑ゆたかな敷地にある、現代アート的でありながら温かな雰囲気の美術館の会場で、多くの方々に真剣に耳を傾けてもらえたこと、頷いていただいたこと、「詩人の感性で語られたことで、自分が住む紀州・熊野がどんな素晴らしいかを発見できた」と言っていただいたことに、本当に励まされました。まさに詩のような出来事でした。