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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩とは接吻である

たいへん直感的ないいかたですが
ランボーの詩は接吻(古い言葉ですね)の詩だと思います。

この詩人はつねに
ざわめく茂みに、激動する社会にふれようと
ほそく敏感な指をのばしている。
風に柔らかな髪をなぜられ
上気した少年のくちびるを他者によせ
詩がこぼれる宝石のように生まれている。

その美しい容姿だけでなく
ランボーが史上もっとも素敵な詩人だと思うのは、
他者や弱者に対し
徹底的によりそう熱い人間の心があったから。

16歳のランボーは、コミューンを熱烈に支持してパリに行き
義勇軍に参加したといいます。
とりわけ
パリコミューンで出会った勇敢な女性たちへのオマージュである
「ジャンヌ=マリの手」は途方もない名作だと思います。

やがて残酷に鎮圧されるコミューン
そして流刑されていく女たち。
けれど、だからこそ、
空から破片がふるように煌めく世界の主である
女たちの未来に恋する手の輝き・・・。
こういう詩が私にとっても理想の詩ですね。

最後の三連です。

このすばらしい手は青ざめた
愛にみちた大いなる太陽に照らされて
機関銃のブロンズのうえで
反乱するパリのいたるところで

ああ ときとして おお 聖なる手よ
決して酔いから醒めることのないぼくらの唇が
そこに震えている手よ おまえの手首では
環の連なりがきらめかせた鎖が叫びをあげている

天使の手よ やつらが ときとして
おまえの指から血を流させて
その日焼けのあとを消そうと試みるとき
ぼくらの身内には言い知れぬ震えが走るのだ