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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

ヤドリギ金子さんの詩

先日からコメントをいただいているヤドリギ金子さんのブログ(リンクさせていただきました)は大変面白いです。時々立ち寄らせていただいていますが、社会に対する鋭敏な問題意識と知覚がからまる文体は、まじめでありつつ軽妙に延々と続き、いつしかこちらの魂を活性化させていきます。詩も書かれていて、注目の詩人かと思います。次の詩は「朗読会のための一篇2」の第二段落。この詩篇は全体を、身をもって読まねばと思っています。私の夫の故郷の山にも強制連行された朝鮮の労働者が作ったトンネルがあります。地下に広大な飛行機工場を作ろうとしたらしいですが、今は通行止めになった一つのトンネルの真っ暗な中をかつて歩いたことがあります。無数にあるトンネルの全体像は、いまだ分からないそうです。そこに埋もれた人々の数も。

夜になるとリンが燃え
青白い光が飛び交う
山へ向かった
四六時中歯をくい縛り
ついには舌を噛み切るほどの憤怒が
立ち上がれない、立ち上がれない、と
洗われはしない坑夫たちが
コンクリートの下からガリガリ爪を立てている
内々で認め合うサロンの臆病なチョッパリたちよ、私よ
歴史の縊死を忌むために粉々に千切れるまで
無垢の焼却炉にいきなり顔を突っ込むように
クラスター爆弾に翻弄されるように
激しい眼になって
ぐにゃぐにゃの哀悼のネジを巻け
出頭せよ、山へ出頭せよ
這いずりながらこの地上へ出頭せよ
「調査」は「略奪」、ナノカ?
「お願いします」は「やれ!」ということ、ナノカ?
「募集」は「強制」、ナノカ?
「徴用」は「拉致」、ナノカ?
組織にまみれて虚ろに到るまで、ナノカ?を続けるノカ?
そして、省略なのか省略ではないのか?
掘っては埋め、また掘っては埋められもした
何を省略し何を省略していないのか?
その都度右往左往する
細倉鉱山でも右往左往した
連行のセンジン宿舎が
今は見事な森になって
踏みつくされた敷石が
草木に抗して沈黙していた