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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

京都は雪、紀州はきらめき…

紀州の海はきまって三月に入るときらきらと輝き、それが一面に雪をふりまいたように見えた。フサはその三月の海をどの季節よりも好きだった。三月は特別な月だった。海からの道を入ってフサの家からすぐそばにある寺の梅が咲ききり、温い日を受けて桜がいまにも裂けそうに蕾をふくらませる頃、フサがいつも使い走りする度に眼にする石垣の脇には、水仙の花が咲いている。(中上健次「鳳仙花」冒頭部分)

私はこの文章が大好きです。
海のきらめきとふりしきる雪の映像が二重写しされ
現実をふうわりと離れた非在の三月が現れてきます。
(ふと私の『龍神』の表紙の鈴木理策さんの「White」も、紀州のふりしきる雪を写しながらそこに海の煌めきをほうふつとさせるものだったと思いだし、新宮出身の鈴木さんもこの冒頭部分を意識していたはずだ、とハッと気づきました。)

京都は今朝は雪。
午後からきらめく紀州へ向かいます。

なお今回は、3月5日に原勝四郎展での講演に加え、翌6日に熊野市の紀州ツアーデザインセンターにて阪本浩子さんと共同の朗読会を行います。こちらはすでに定員を占めきりましたが、内容をぜひ下記URLにてご覧下さい。
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http://homepage3.nifty.com/kinan-tdc/tour_info_pages/tourguide/20110306shirodokuongakuhitotokipdf.pdf#searc