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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

桔梗色の夜明け(詩)

桔梗色の夜明け──市民保守少女のための習作

朝がくる
月も星も老いしぼむ空の
夢をおかす疲弊の桔梗色
まぶたをなくした私の眼は
眠りながらみている 染まっていく
ああ虚空
あのうつろ
私のいらだちをつかのま結びとめていた青のマフラーは
するするのぼっていく
乾いた目でみつめてもみつめても
あの旗はあがらないまま
桔梗色にくろずんだマフラーが
ばたばた物質的な羽音をたてるのだ
私自身のように
この私の孤絶をあばくように
(蛇口がふいにこぼす涙のおと)
あらわすぎる空から両眼は染まっていく
この桔梗色はなんなの
はやくあのリアルな青がほしいよ
今日みんなでうちふるう
安い色で無数に印刷された国の旗の
フェイクの朱赤輝く リアルな青
(蛇口が呑みくだす時のおと)
時はなぜこんなにも与えられているの
何者から 何のために 
歴史だなんて
お父さん 私は言い訳は許さない
この桔梗色の重さを
ひとり横たわる私に押しつけるのは間違っている
間違っていると
ふいにあなたが眼を逸らしたあの時から
私が決めた
歴史は私が決めるのよ
本当の父親
六十五年前にこの国から追い出されたんだ・・・
みんなが言う
俺たちの本当の父親を取り戻そうぜ!
みんなの血が叫ぶ
父を追い出した敵を追い出そう!
こぶしをつきあげるとき
フェイクの青はなんとリアルに輝きわたることか
私の若さの闇から
毒液のような時間が湧きつづけても
国旗のポールからつかのま離れた
アルミくさい男たちの手は
いつでもすくって飲んでくれる
夜に飲む 昼に飲む 朝に飲む
フェイクだからこそリアルな兄 そして
弟として

やがて手首から流された私の血が
街頭にあふれ
世界に私が存在する 私だけが