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詩空間

河津聖恵のブログ。この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『ヒクメット詩集』(ナーズム・ヒクメット、中本信幸編訳、新読書社)

ある人から思いがけないクリスマスプレゼントが届きました。Hikumet
『ヒクメット詩集』(ナーズム・ヒクメット、中本信幸編訳、新読書社)。
ちょっと驚きました。
こういう詩がまさに今読みたかったのだと詩集を開いて思ったからです。

ヒクメット(1902〜1963)はトルコの詩人です。
ランボーマヤコフスキーに影響を受けつつ
民族解放運動に加わり、投獄され、世界の世論におされて釈放されます。
その後世界の平和運動の先頭に立っていきます。
やがて亡命先のモスクワで亡くなります。

昨日の記事で、
原発事故のあと、息を吹き返した過去の記録映画の一つに
マリアン・デレオの『チェルノブイリ・ハート』があるといいましたが
この映画の冒頭にヒクメットの詩「生きることについて」が流れるそうです。
これも素晴らしい詩ですが、
何よりもこの詩集では
アメリカ支援のためのトルコの朝鮮戦争参戦への告発詩が目を惹きます。
一昨日報じられた
朝鮮民主主義人民共和国の指導者金正日総書記の突然の逝去とも符合して
感慨深いものがあります。

トルコが朝鮮戦争に参戦していたこと。
そんなことをどれだけの日本人が知っているでしょうか。
トルコまでが参戦した朝鮮戦争とは何だったのでしょうか。
そこで何が行われたのでしょうか。
日本はそこからまず考えなくてはならないはずです。

アフメッドに ──クラーク将軍麾下に

アフメッドよ 朝鮮では雨がふりしきっているんだね
おまえは
おまえの小銃の銃口のあとから
泥濘の地面を
はっているのか
額の血管がはれあがり
眼にはもやがかかり……
アフメッドよ おまえはだれを殺しにゆくのか

七つの海のむこうに
家人たちとともに
おまえのアナトリアはとりのこされた
家人たちは今年
税金を払えなかった
赤ちゃけた牡牛がへたばった
弟はいない
出稼ぎにいった
アフメッドよ おまえはだれを殺しにゆくのか

七つの海のむこうに
村人たちとともに
おまえのアナトリアはとりのこされた
村人たちは今年
地主のアリに土地を要求した
憲兵と乱闘した
おまえの母親は傷ついた
おまえの隣りのドウルスンは殺害された
おまえのくにのものたちは刑務所に入れられた
アフメッドよ おますはだれを殺しにゆくのか

(略)

べつの軍隊をこの国はみたのだ
偉大な北方からその軍隊はきた
それは日本の圧力にうち勝った
それはここに幸福の苗をうえた
代償をなにひとつ求めなかった
その軍隊は帰るとき
見送られたのだ こんなことばで
「兄弟たちよ ゆるしてくれ
心でねがうようには
感謝をあらわせないおれたちを
あなたたちの思い出は
永久に生きつづけるだろう
工場のけむる煙突のなかに
工場のサイレンのなかに
おれたちの田畑の黄金の種のなかに
おれたちのほほえむ眼のなかに……」
アフメッドよ 春にはこんな夜明けはよくあるじゃないか
家を出ると
世界はまるで
よい知らせがきたみたいな
北鮮の人たちには
毎朝
毎夜
自分の国がそのようだった
真の自由があった
土地は
すべてに分配されていた
鉄道
    金
      石炭
畑の雨
山の風

 雲
    日光
学校
    工場
        託児所
              病院
                  幼稚園
すべては共有だった
人民は仕合わせだった
アフメッドよ おまえはだれを殺しにゆくのか
アフメッドよ だれを だれを
この地上に
実現された 自分の夢 ではないのか それは。
(後略)