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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

東柱の話(二)

2007年初夏、私は『文藝春秋』に一篇の詩を書きました。

プロメテウス−−尹東柱

加茂大橋の欄干にもたれ 夏の北山をのぞむ
(白い闇を抱え)私は帽子をまぶかに
��死ぬ日まで天を仰ぎ�≠ニ呟く小さな人になる(誰もみない)
遠近法よ 揺らげ…
(緑は故郷のように近づき 水は未来の北方を青く映す)
光、光、絶え入るすべての至福と哀しみ その明るみ…
詩人が恥じ 慕わしく消した名��童舟�≠熕テかに蘇る
この冬 春の幻のようにあなたをふかく知った
��私を呼ばないでください�≠ニいう遺言に逆らい
プロメテウスと名付ける あなたを知ってゆく私を

昨日、この詩の舞台となった加茂大橋に、立ちました。

「東柱を生きる会」の高田さん、阿曽さん、南堂さん、陸橋さんと、東柱の通学路を辿る中で。

私たちは「序詩」の碑がある同志社大学から出発し、今出川通りを東へと向かっていたのです。

橋からはみえたのは、夏の満々とした水ではなく、冬枯れしたような鴨川でしたが、忘れていた詩を解かれるように思いだしていました。

いかなる詩空間でこの作品を書いたか、その記憶があらためて蘇りました。

風景とは不思議です。なぜ言葉を触発し、記憶を喚起するのでしょうか。まるで風景そのものが色や光や風で、声もなく語り出すように。

続きは明日に。