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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

倉田さんの手術が無事成功しました+詩

昨日紀州・熊野で私が大変お世話になった倉田昌紀さんの手術が
大阪の病院で行われ、無事成功しました。
10時間に及ぶ手術をよく耐えられ、手術直後もご家族にしっかり応答されたとのことで、安心しました。
一昨日お見舞いに伺った時は、手術の準備のために頭をそられた後で、むしろ若々しい少年に戻られたようでした。医療技術ももちろんですが、ご自身の生命力・蘇生力に護られたのだと思います。
去年に倉田さんのために書いた詩をアップします。

私たちの生があなたのドアを叩く ──M・Kに              Image022
                            河津聖恵   

阪神高速13号東大阪線 
コンクリートはつねに他者の痛みを懐妊する
暗黙のとどろきを増していく下方
美しい虫よ、湧け
高架はさらに黒く流れ
星のかけらを運んでいく
魂の響きをたてるトラックは
失われて輝きだす他者のまなざし 声 血を 荷台に載せ
霧の鏡に走り込み、消える
ころがる乳房のパン 糞尿の瑠璃玉
風が路肩で口づける 百合のふるえるはだか

ふたたびの生を下方という真実からつくるために
新しい虫よ、湧け
霧を払い巨岩のようにそそりたつ
大阪府立成人病センター
夢の中でいつも触れるコンクリートの柔らかさに
私は夢の中のようにこいねがう
もう死の似姿など描きません
無の雨に打たれても
限りなくうつほをつかまされても
だからこの冷たい指にふたたび乳はあふれますように──
訪れるたび 生という不思議な牝牛を信じていく
エントランスで小さな虫になり
海のただなかのように方向を見失っても
ざわめきと輝きと静寂が立ちまじる曲がり角から
不可視の水嵩はつねに増してくるとしても

鳥瞰するあなたは
虫瞰する私に向かって書きつづける
遙か上方でボールペンに力をこめる
��連続と反復��
私は昇りながら筆圧を感じていく
共に生きてあることの重力がぐんとかかる
よろこびが悲しみをわずかに越え
みえない涙が頬に肩にこぼれおちる
私たちを 過去と未来をつなぐために
文字はたしかに書かれつづける
��背後からの生存感覚��
大きな羽を閃かせて天使と天使が戦うようなあなたの筆跡
私たちの生そのものを編んでくれる文字
��神と魂��
書き止めたてのひらに
エレベーターは受けとめられる

11F リノリュームが艶やかにいのちを顕してひろがる
ものみなは脈打ち
色は絵の具のように流れていく
消火器の赤 自販機の青 壁の白
死のすきまはもはやどこにもない
ホールの窓から夕暮れは内部を劇しく染めつづけている

�� �≠�あかあかと乳はあふれ
私たちの生があなたのドアを叩く