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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

情動

昨日のコメント欄にも情動のことを書きましたが、Image459
私自身はずっと
恐らく詩を書きはじめた当初から
情動(なぜ情動ということばで自分がそれをとらえたいのか分かりませんが)
を抱えていたのだと思います。
あるいは
それは私自身の情動だったのか
それとも私などまだ確立していなかったのだから
人間が本来抱え持つものだったのか──
いずれにしても書きはじめた頃
言葉の能力がおぼつかない私にとって
情動とは「むきだしの」人間のものだったかもしれません。
(けっしてけもののものではなかったと思います)
それは私の下方にある
これまで生きた人間たちが語ったり呟いたの叫んだりした
言葉の闇の流れのうごめきのようなものだったのではないでしょうか。
子供の頃はだれでも
大人になった頃の例えば数千倍の感受性があるといえますが、
私もまたよく奇妙な夢を見ました。
地下と関わる、現実としか思えない夢。
巨大な怪獣の影につぶされる未来の都市で
あかあかとした炎そのものとなってあがる叫喚。
地獄へつづくとおぼしき階段を転げ落ちると
踊り場にさーっと光がふりそそぎ
私に絶体絶命の問いかけをする、
(例えば父親を取って食うがおまえが代わりになるかという)
スフィンクスのような姿のない声。
昼間庭で遊びとしてふみつぶした夥しい蟻たちが
知恵ある者としてよみがえってしゃべる地下の迷宮。
そうした夢はきっと
まだ私の「地下」にうごめいていて
この世に存在したい、認められたい、
と私をつきうごかしている気がします。
それは詩の言葉になるまでは
悪意とも善意(?)とも
神とも悪魔とも
敵とも味方ともつかない
姿をすべて闇に浸して不可視の
けれどたしかに実在する生命なのです。