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詩空間

河津聖恵のブログ。この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

李英哲「『ハッキョへの坂』を登りつづける」(「思想運動」881号)

「思想運動」881号(11月15日付)に、李英哲さん(朝鮮大学校国語学部准教授)のエッセイ「『ハッキョへの坂』を登りつづける」が掲載されました。朝鮮学校の生徒達の生命力に触発されて作った私の詩集『ハッキョへの坂』に対し、かつてのハッキョ生であり、今はハッキョ生の父親でもある李さんが、この詩集の時空を、ご自身の人生と記憶の内部と交錯させて読んで下さったことに、私は作者としていい知れない感動を覚えました。本当にあの詩を書いてよかった、と心から思いました。当事者の感性に繊細に受容されたというのは、詩人として最大の喜びです。
 PDFファイルでぜひご一読下さい→hakkyo_essey.pdfをダウンロード

 じつは李英哲さんは小説家でもあり、「月刊イオ」に素敵な作品を寄せています。私は、とりわけ昨年の連載「穴を掘る女」と「水曜日たち」に、とても惹かれていました。前者は日本の朝鮮侵略、後者は慰安婦問題を象徴的な仕掛けを持たせて描いていて、ああこういう新鮮な角度からの問題への迫り方があったんだと大変触発されました。
「私は死ぬまでに、一体あと何千回の水曜日を迎えるのだろう──水曜日が来るたび、いつからかこんなとりとめのない考えをするようになった。中学生の頃、私は物事を月水金曜日的なものと、火水土曜日的なものに分類する空想をよくした。数学や理科は月水金曜日って感じだ。国語や社会、それに体育の時間は火木土曜日、という風に。地下鉄は月水金的な乗り物で、バスは火水土的。学校行事でも芸術発表会は月水金的で、運動会は火木土。東京の言葉は月水金で、関西弁は間違いなく火木土だ。中森明菜の歌は特に月水金的だった。学校の帰り道こっそり立ち寄るアイスクリーム屋は月水金。たい焼き屋なら断然火木土だ。……私はおよそ考え付くあらゆるものを二種類に分類しながら、時には仲の良い友だちともよく盛り上がったものだ。」
「水曜日たち」冒頭部分です。無限の「水曜日」が訪れる不安な世界へ、じつに魅惑的に導いてくれる書き出しだと思います