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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩「ハナミズキ」

ハナミズキ
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死者はどこからあふれるか
空の方か
星のためにのこされた
かすかな梢からか
隠れていた黒い永遠が
今 宇宙へひらひらなげうつハナミズキ
死者のためには遅すぎた白い花々は
つぐなうために
狂い咲くしかないらしい
生者の眼にはまるで白い血だらけだ
だが
ふりはらおうとする生者の身体もまた
危ういほど黒い
怪しいほど暗い
死者の白い血をやすやすとまとっていくのだ
しかし
生者が死者の仮装をしたからといって
どうなるというのか
ひらひらひらひら
なかぞらからあふれてくる白い血を
のみくだしたからといって
生きる者がなりかわれはしない
死せる者の美しさを
内側から輝かせることなどできない
足下では
かしこい草たちのひそかな息が
生きる者は生きると諭している
生きることとはただ
二酸化炭素のように不純に
世界をみたしていくことか
深まる闇のこんな庭先
頭の中ざらざら
体の奥ざらざら
生の殻は乾き渇いている
ハナミズキははげしくなる
あふれる死者の海が近づいているのだ
私たちこそが死んでいると
生こそが画像だと
生きることも死ぬこともできず
無の身をよじりながら
死者の海がおしよせてくる