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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

2022年3月21日付京都新聞「詩歌の本棚・新刊評」

三月二十九日は詩人立原道造の命日。かつて明けないコロナ禍に絶望感を覚えだした頃、ふと再読した立原の言葉に救われた思いがしたのを覚えている。特に死の直前詩人として生き直すために、病を押して出た旅の中で記された「長崎紀行」は今も眩しい。結核と…

美しく悲しい詩

ウクライナといえばこの詩を思い出す。あまりにも美しく悲しい詩です。今このとき、さらに。 (無題) パウル・ツェラン(中村朝子訳) ハコヤナギよ、お前の葉が暗闇のなかを 白く見つめている。ぼくの母の髪は 決して 白く ならなかった。 タンポポよ、こんな…

新詩集『綵歌』が刊行されました

若冲をテーマとする連作詩集『綵歌』が、ふらんす堂より刊行されました。刊行日は2月8日、若冲の誕生日(旧暦)です。 本書に収めたのは、2006年から5年半をかけて書き継いだ30篇と、各篇について図版付きの解説、そして理解の補助としての略年譜です。詩集と…

2022年2月7日付京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚・新刊評」

詩の言葉はふいにあふれだすものだ。日常の奥底で密かに熟成されてきた言葉が、やがてふさわしいテーマに行き当たる。その時、詩は解放されるように生まれる。「私」が「私たち」となるための地平が見えてきて、言葉は彼方へとあふれる。 浦歌無子『光る背骨…

新詩集『綵歌』刊行のお知らせ

新詩集『綵歌』がふらんす堂から刊行されます。 刊行日は若冲生誕の2月8日。発売日は奇しくももバレンタインデー。五年半かけて試みた詩による若冲へのオマージュです。若冲の代表連作に「動植綵絵」がありますが、そこに収められた絵が30幅であったことに私…

2021年12月6日京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚・新刊評」

人の心は今どんな傷を負い、どんな希望と絶望が明滅しているのか。不可視の痛みが多くの人の心に深まっているのは確かだ。自己の痛みからそれを捉えられるだろうか。痛みもまた心の奥底で共鳴しうる響きを持つとしたら。遥かな他者の痛みを感受するために、…

2021年10月18日京都新聞朝刊文化欄「詩歌の本棚・新刊評」

最近詩で京言葉を初めて使った。東京から京都に来て長い年月が経つが、その時母語である標準語からふっと解き放たれた気がした。意味や感情に柔らかさが生まれ、風通しがよくなり、対象がぐっと近づいた。 方言には標準語にはない生命力がある。京言葉にも柔…

11月13日「現代詩の祭典」で講演します

11月13日に紀の国わかやま文化祭「現代詩の祭典」で講演をします。 紀州・熊野をめぐって詩を書き、詩集『新鹿』と『龍神』が生まれた経験について語ります。 中上健次さんと深く関わる詩「新鹿」一篇が話の中心になると思います。 詳細は以下のサイトにあり…

2021年9月6日京都新聞文化面「詩歌の本棚・新刊評」

詩は戦争を伝えることも出来る。詩だけに可能な伝え方を模索するならば。心の内奥で死者と出会う経験を重ねて、それは掴み取られる。幻視する非業の姿、どこからか聴こえる叫び、悲劇を伝えてと託す声。やがて無意識を突き動かされて、新たな詩が始まる。 石…

2021年7月19日京都新聞朝刊「詩歌の本棚・新刊評」

すぐれた詩は音楽に似る。だが音韻が美しいというだけでは「音楽」にはならない。心と心が響き合うという言い方でも説明出来ない。「音楽」はむしろ心が消え果てた冷たい空虚からやって来るように思う。言葉が読み手にひそむ空虚に触れ、不思議に鳴らす。そ…

2021年6月7日付京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚・新刊評」

視覚は現代詩において重要な感覚だ。だが見えるものを日常的に見ることからも、また見えないものを観念的に見ようとすることからも詩は生まれない。そうではなく日常や観念によって見えなくされている世界のすがたを、言葉の力で陰画のように可視化する時詩…

2021年4月19日京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚・新刊評」

詩作品にはそれぞれに固有のトポスがある。一般にトポスとは、例えば故郷のように記憶や情動と深く関わる場所を指す。一方詩のトポスとは旅先から自室に至る、詩が生まれたり詩の舞台となったりする時空のことだ。その実相は、日常の遥か外部にありつつ、作…

2021年3月1日京都新聞文化面「詩歌の本棚・新刊評」

東日本大震災からもうすぐ十年。あらためて、年月の経過が掠りもしない時間の外の出来事だったと思う。大津波は「そこ」に今も押し寄せる。蘇る破壊と叫喚に目と耳は凍りつく。あの時詩を書く意識の底にひらいた深淵は、言葉の瓦礫を浮遊させつつ決して閉ざ…

2021年1月18日京都新聞「詩歌の本棚・新刊評」

人の意識は今、途方もない不安に揺らいでいるようだ。無意識もまた立ち騒いでいるのではないか。一方詩は「天から降りてくる」とも言うように、無意識を感受して生まれる。この不安な時代から新たな詩が生まれないとも限らない。夢、幻想、トラウマなどの在…

『現代詩手帖』12月号・論考「詩という一輪の鋼の花」

『現代詩手帖』12月号には、一年の展望という趣旨で、論考「詩という一輪の鋼の花」を書きました。この「鋼の花」は石原吉郎の詩「花であること」からのイメージ。神品氏との対談でも出た木島の「断絶」と、石原の「断念」は、戦後もコロナ禍の今も、詩が身…

『詩と思想』1・2月号 詩人木島始をめぐる神品芳夫氏との対談

『詩と思想』1・2月号で、戦後詩誌グループ『列島』の代表的詩人木島始をめぐって、詩人・独文学者の神品芳夫氏とメール対談しています。神品氏は『木島始論』を上梓され、私は黒田喜夫論を書く際に、木島さんを「再発見」しました。この遊撃的社会派詩人の…

HP「詩と絵の対話」閉鎖のお知らせ

HP「詩と絵の対話」は、来たる12月25日20時をもって閉鎖することになりました。未見の方は期限までにぜひご覧下さい。 https://www.shikukan.com

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評⑨

図書新聞3470号(11月7日発行)に、宗近真一郎さんが素晴らしい書評を書いて下さいました。 宗近さんの論は、その時々のテーマについて書かれた錯綜した諸論を、今この時に現代詩に突きつけられている根本的な問題によって、鋭く刺しつらねています。政治と文…

11月16日付京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚・新刊評」

詩は遥かな他者への投壜通信だと言った詩人がいる。至言だが、一方身近な他者も詩の重要なモチーフである。だがそれを詩に描き入れるのは決して易しくはない。小説やエッセイとの違いが問われるからだ。詩でしか見いだせない他者との関係とは何か。 東川絹子…

水田宗子『詩の魅力/詩の領域』(思潮社)

水田宗子さんの新エッセイ集『詩の魅力/詩の領域』(思潮社)は、詩というものの人間にとっての存在理由を、沈黙、深層意識、身体、記憶といった根源的な次元から思考の光を照らして浮かび上がらせた、今非常に重要で興味深い一冊です。 私自身、じつはこのと…

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評⑧

共同通信配信による書評が、長崎新聞(9月20日)、千葉日報(9月22日)、信濃毎日新聞(9月26日、写真)に掲載されました。

2020年10月5日京都新聞朝刊文化面「詩歌の本棚/新刊評」

夢の世界を列車で旅するという設定で詩を連作したことがある。詩の自由が未知の時空を開いていく喜びを、今も思い出す。自動筆記のように虚空から次々と湧き出す不思議な駅名や光景。それはどこか悲しみを含む至福の時間だった。 浅井眞人『烏帽子山綺譚』(…

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評⑦

先程「現代詩手帖」10月号の福田拓也さんの評を紹介しましたが、同号には宮尾節子さんの書評「翅毟り、詩撃ちー河津聖恵『「毒虫」詩論序説』」も掲載されています。「翅毟り、詩撃ち」という大変印象的なタイトルに込められたものは、まさに私が言わんとす…

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評⑥

「現代詩手帖」10月号の詩書月評で、福田拓也さんが『「毒虫」詩論序説』について評して下さいました。黒田喜夫や清田政信をめぐる煩瑣な文脈が、タイトルの「毒虫」と照らし合わせて的確に辿られています。末尾の以下の一節に背中を押されて、『序説』の先…

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評⑤

Facebookの友人の梶野聡さんが書評をウォールにアップして下さいました。本書全体の文脈を、非常に的確かつ綿密に追いつつ、第三詩論集『闇より黒い光のうたをー十五人の詩獣たち』からの大きな流れの中で捉えて頂いています。作者の私も我が意を得たりとい…

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評④

9月5日付東京新聞及び中日新聞夕刊に、詩人の杉本真維子さんによる『「毒虫」詩論序説』の書評が掲載されました。

8月26日朝鮮新報・「『怯懦』の呪縛を解いて」

8月26日付朝鮮新報に「『怯懦』の呪縛を解いて」と題された、私の意見が載りました。連載「幼保無償化適用を・『多種多様』を問う」の第8回です。私が大まかに書いた内容を的確にまとめていただいたものです。

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評③

8月31日付京都新聞文化面(共同通信配信)に、城戸朱理さんによる書評が掲載されました。

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評②

8月26日付しんぶん赤旗文化面に、詩人の佐川亜紀さんによる書評が掲載されました。

詩論集『「毒虫」詩論序説』書評①8月26日付朝鮮新報

8月26日付朝鮮新報文化面に、文芸評論家の卞宰洙(ピョン・ジェス)さんによる書評が掲載されました。