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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

朝鮮新報 2011.3.21「相互扶助の精神で困難を乗り切ろう」

先ほど書いた記事の中で私は「人間がこの危機を生んだもととなったエゴを捨て、どれだけ他者と関係する存在として生まれ変われるか」という自問しましたが、その「新生」の一つの兆しを伝える記事を見つけました。今悲しみを共に乗り越えるために、人から人へ手渡されるひと椀のスープの温もりは、いのちであり、希望です。

相互扶助の精神で困難を乗り切ろう
                             [朝鮮新報 2011.3.21]

 総連緊急対策委員会宮城県本部が、同胞が避難生活を送っている東北朝鮮初中級学校の周辺に住む日本住民のために、20日12時から仙台市立八木山中学校の運動場で炊き出しを行った。

 同対策委員会では、東日本大震災発生後、各地の総連組織、同胞から寄せられた救援物資でまかなわれた豚肉ミソ汁やおにぎり、キムチ、牛乳など400食を地域の住民にふるまった。炊き出しには、朝青メンバー20余名をはじめ東北初中の教員、食堂担当者、活動家が参加した。

 東北初中のテントを張り、「みんなでがんばろう 八木山住民支援炊き出し」と書かれた横断幕を広げた炊き出し場では、12時前から近所の大勢の日本住民の行列ができた。

 対策委員会では、ビラ、Eメールなどを利用して今回の炊き出しを事前に地域住民に広く知らせていた。

 太平洋沿岸地域に比べて相対的に被害が小さかった仙台市内にも、大地震で家の中がめちゃくちゃになっている家庭が多い。

 大地震から10日が過ぎたが、今も多くの地域で電気以外のライフラインが遮断されたままで、食料、燃料などの物資が絶対的に不足している。

 八木山地域も事情は同じであるため、この日、学校に集まった日本市民も温かい豚肉汁、キムチ、おにぎりなどを提供してもらったことに感激していた。

 また、同地域に居住する同胞も多く駆けつけた。1時半には、準備した400人分がすでになくなった。

 太白区若葉町に住む半田茂さん(60)と絹江さん(60)夫婦は、隣の人からこの炊き出しの話を聞いて駆けつけたという。娘と3人暮らしという半田さん夫婦は、「我が家にもまだ水道やガスが入ってこない。今は住民の情報を交換しながら必要な物資を購入したり、1台の乗用車に相乗りして燃料を節約するなど、お互いに助け合いながら暮らしている。このような大変なときに朝鮮の人たちが地域住民のためにおいしい食べ物をふるまってくれてとても感謝している。元気付けられた。これからも支援を続けてほしい」を語った。

 八木山中学校の同窓生同士という及川育美さん、郡司詩穂さんは仙台市内の高等学校を卒業したばかりで、4月からそれぞれ県内の大学に通うことになった。しかし、まだ安否が確認できていない高校の同窓生もいるという。

 歩いて給水を受けにいく途中、宣伝カーの炊き出しの案内を聞いたという両人は、「スープもおにぎりも、キムチも本当においしかった」と口をそろえ、満面に笑みをたたえた。

 お隣の夫人と一緒に駆けつけたという中野富子さんは、「久しぶりに温かいスープをご馳走になった。体が不便なため、家にいる夫の分まで頂いて帰るところだ」と、喜んでいた。

 最初は、今回の炊き出しの場所を東北初中にする案もあったが、検討した結果、地域住民にとってもっと集まりやすい八木山中学校に決まった。同校は、以前から東北初中との交流を重ねている。

 現場の実務責任者だった東北初中の崔志学教員は、「住民が喜ぶ姿を見て、われわれもやりがいを感じた。こんなときこそ、互いに助け合って困難を乗り越えていくべきだ」と感想を述べた。

 後に、八木山中学校を訪れたある住民から、東北初中に感謝の気持ちを伝える電話がかかってきたり、TBC(東北放送)は、この日の炊き出しの光景を放送するなど、現地での反響は大きかった。

 対策委員会は、地域住民のための炊き出しを1回きりではなく、今後も続ける予定だという。