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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「 映画『空と風と星の詩人』公開記念 詩人を偲ぶ秋の集い」

先週の土曜日(9月16日)に、同志社大学で行われた「映画『空と風と星の詩人』公開記念 詩人を偲ぶ秋の集い」は大変多くの方々が集ってくれました。

 

私も事前にSNSで頻繁に情報を流していたので、それを見て来てくれた人も意外に多くて、あらためてSNSの発信力を実感しました。

 

会場となった同志社大学今出川キャンパスの教室は、ほぼ満席。半数以上の方々がすでに映画を見てから来ていたのも、驚きました。

 

まず、RKB毎日放送制作のドキュメンタリーを皆で見てから、私の話「映画『空と風と星の詩人』が教えてくれるもの」、そして愛沢革さんの「また別の故郷ー尹東柱の夢について」が続きました。(なお当日の講演内容は、来年の「詩と思想」3月号で触れる予定です。)

 

色々押して、時間が30分オーバーしてしまったが、皆さん熱心に耳を傾けて下さった。本当にありがたかったです。あらためて尹東柱の詩の力を感じました。

 

なぜ死後72年以上もたち、尹の詩はこれほど人の心を惹きつけるのでしょうか。

 

それは端的に、詩人自身が、詩が自己と他者への励ましであり、慰めであることを深く信じていたからに他ならないと思います。

 

私もさらに尹東柱の詩を読み、考え、その美しさに見合う言葉で伝えられるように努力していきたいと、今回の講演を通して思いました。

 

なお京都シネマでの『空と風と星の詩人』の上映は明日22日までです。朝10時から。お見逃しの方はぜひ明日足を運んで下さい。

 

また、この映画ではいくつもの尹の詩が、尹役のカンハヌルの声で朗読されます。これがまた甘美で素晴らしいので、ご傾聴下さい。

 

そしてもし、この映画で尹の詩に興味を持たれたら、詩集『空と風と星と詩』を手にとって下さい。岩波文庫(金時鐘訳)が入手しやすく、またコンパクトで読みやすいかと思います。

 

ちなみに岩波文庫の巻末には、金時鐘さんの渾身の尹東柱論が収められています。これは私が読んだ中でも最もすぐれた現代詩論です。

 

尹東柱は決して主観的に自分の感情に耽溺するだけの「抒情詩人」ではなかったこと、自分の心情や思考を暗喩あるいは物と物との関係によって可視化しようとした、類い稀な「現代詩人」だったことを、「思いを描き出した」詩人であったことを、金時鐘さん固有の鋭敏な日本語の力によって、納得させられていきました。

 

「植民地のショクとも詩行には出ないのに、読む人の胸には植民地統治下の晴れやまない光景が明確に刻まれてくるのです。」

 

尹東柱の詩はその大方が思いを描いている詩です。詠嘆もなければ、しめっぽい抒情もありません。奥まった悲しみが水晶のように透けて、あたりの情景に凝固しています。」

 

「抒情とは人の感性をも漬(ひた)している羊水のようなものです。いかに知識が豊かでも、思考の古い人はいくらでもいます。尹東柱を手放しでいとおしむのでなく、彼の時勢にまみれることのない抒情の質に思いをいたして、くり返し読まれる尹東柱の詩であるのとを念じます。」

 

宇治の詩碑もついに建立されました。式典が10月28日11時から行われるそうです。関係者の長年の努力と願いのたまものです。尹東柱の詩の力が、拓いていく未来があると信じます。

 

ご参考までに翌日17日に京都新聞に載った記事をアップします。

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