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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

7月24日付「しんぶん赤旗」文化面・「詩壇」

  沖縄全戦没者追悼式で中学三年生の相良倫子さんが朗読した詩「生きる」は、内容と一体化した真摯な声で多くの人々の心を打った。「私は、生きている。/マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、/心地よい湿気を孕(はら)んだ風を全身に受け、/草の匂いを鼻孔に感じ、遠くから聞こえて来る潮騒に耳を傾けて。」と始まるこの詩から、沖縄とはそこに生きる者には日々五感で感じるもの、豊かな自然の生命力なのだと知った。「阿鼻叫喚(あびきようかん)の壮絶な戦の記憶」から島はまだ癒やされず、死者たちは声なき声で訴え続けていることも。未来は「この瞬間の延長線上にある」から、今を生きる者は共に平和を創造していこう―詩「生きる」はそう渾身で呼びかける。沖縄と本土の溝に詩の声は確かに橋を
架けてくれた。その橋を未来へ繋げていくのは、詩を受け止めた本土の一人一人の勇気と感受性だ。
 柴田三吉氏の新詩集『旅の文法』(ジャンクション・ハーベスト)は、東日本大震災以後の七年間の旅から生まれた。福島、沖縄、韓国の人々と関わりつつ、各地で起こっている問題を自分のものとして書かれている。その地の「生活者」でなくとも「当事者」になれる、共に社会を作っているのだから―氏が旅の中で感得したスタンスに深く頷く。私もまた被害者と加害者の間の溝を言葉の力で越え、生命の苦しみや喜びを分かち合うような詩を模索したいと思う。

「からだのどこを開けば/取り除くことができるのか/無理に抜こうとすれば 血管も肉も/引きちぎられてしまうだろう」(「棘」)

  辺野古の座り込みで見た機動隊車両
の底には、有刺鉄線が張り巡らされていた。その棘は今も詩人の胸を刺し、痛みの中で彼我の命が共鳴しているのだ。