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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

9月17日国会前に行きました

先週17日、連日国会前で行われている、

安保法制反対のデモに参加しました。

以前反原発のデモに参加したことはありましたが、

国会に行くのは二年ぶりくらいでしょうか。

採決直前ということもありかなりの混雑が予想されました。

一人で行くと迷子になってしまいそうな心配があったので、

フェイスブックで参加する旨を記していた作家の黄英治さんに連絡をしたところ、

一緒に行ってもらえることになりました。

夕方霞ヶ関駅で落ち合うことにしました。

四谷で霞ヶ関に向かう地下鉄に乗り込むと

少し違和感を覚えました。

京都に住んでいてTVでだけデモの様子を見ていた私は、

今日辺りは地下鉄に乗れば車内にはプラカードを持った人がたくさんいて、

デモの空気が立ちこめているだろうと想像していたのです。

しかし空いた車内には背広を着た勤め帰りの会社員たちが

一人一人黙って座っているだけ。

この先で激しいデモが行われていることなどとても思えない

乾いた空気に寂しさのようなものを覚えました。

しかし霞ヶ関で降りると、ホームにはもうプラカードを抱えた人々で混み合っています。

各車両には多くのデモ参加者がいたのでしょう。

私が気づかなかっただけで私が乗っていた車両にもいたのです。

行き過ぎる会社員たちにプラカードを掲げて見せる人もいました。

改札口近くで

「九条こわすな」「戦争法案反対」と書かれたプラカードを配っていたので、

一枚もらいました。

黄さんもすでに来ていて、水色の雨合羽を着ています。

外は雨です。

私も透明な合羽を着込みました。

ツイッターで「傘は危ないので止めるように」という情報を目にして

今朝あわてて買い求めたものです。

階段をのぼり地上に出ると、

まるで別世界に思えました。

青い警察車両の壁のまえにずらりと警察官が並んでいます。

まさに非日常であり、私の中での戒厳令のイメージにも近い。

雨の中、どこか怒気を含んだ声で

「こちらへお願いします」と警官たちは人々を誘導していきます。

人はさらに多くなり

私は黄さんの水色だけを頼りについていきました。

やがて左手に国会議事堂が現れました。

LEDにライトアップされているのか、

議事堂の姿は、TVで見るよりもずっと冷酷で硬質な感じ。

そしてこちらはうち捨てられたように暗い。

植え込みに入れば真っ暗がりです。

18時半から始まる集会が行われるステージへ近づくにつれて

人々の数は増し

足下が見えなくなってきたので、

私は買ってきたペンライトを取り出して黄さんに渡しました。

ツイッターで「光の粒になる」という表現をよく見かけますが、

その「光の粒」グッズとして、百均で入手したものです。

あの13万人が集まった夜の国会前の空撮の美しさを

演出したのはこうした小道具でした。

周囲を見れば

今夜もたくさんの人々が色とりどりのペンライトを手にしています。

しかしあまりにも人の数が多く、

息苦しいくらいになりました。

雨もつよまってきました。

すでに「アベはやめろ」「憲法こわすな」のコールも始まっています。

国会周辺のいくつもの場所に設置してあるスピーカーが

ついに集会の開始を告げました。

ステージはすぐ近くなのですが人の頭がぎっしりで見えません。

辻元清美さんや福島みずほさんや室井祐月さんらが登壇しました。

安保法案反対の意思表示がされるたびに喝采をあび

ペンライトがいっせいに振られます。

私もいつしか心が高まり唱和していました。

そして憲法学者樋口陽一さんが登壇しました。

前にいた黄さんが位置を譲ってくれました。

それでもほとんど見えませんでしたが、

樋口さんの後ろ姿を何度か捉えることが出来ました。

平和憲法が危険にさらされていると実感した数年前に

私は樋口さんの『日本国憲法は時代遅れか』という著書をよみました。

とても分かりやすい本で、

自民党が唱える憲法改正がいかに理不尽なものかを、

私なりに納得することが出来ました。

その後の新聞などでのご発言にも大変共感し、

その知識と良心に感銘を受けてきました。

その樋口さんが雨に打たれながら、

ご高齢にもかかわらず必死で訴えています。

胸がしめつけられる思いがしました。

「社会のコンスティチューションが壊されようとしているのです!」

樋口さんははりつめた声で訴えました。

そう憲法とは

社会の骨格を作り上げるもの。

私もまたその同じ思いをずっと抱いてきたのだと思います。

その骨格のゆらぎを

この安保法案が問題化するずっと以前から感じていたのだと。

いつだったか分からないほどぼんやりと、いつからか―。

やがて朝鮮学校への襲撃事件や無償化除外という問題をつきつけられ

この社会の崩壊を身で感じ取ったのです。

雨がいつしか小やみになりました。

夜の深まりと共にデモは激しさを増す気配です。

黄さんと私は少し話もありましたので

心残りでしたがデモ隊を離れ、

地下鉄に乗り

ふたたび一見デモとは無縁なネオンの眩しい街へ出て行きました。

少しの間のデモ参加でしたが、

来て見なくては分からなかったことがたくさんありました。

何よりもあの国会の姿の冷厳さと

デモ隊のいる闇の深さの対比。

私の五感は事態の深刻さをふかく感じ取りました。

なぜこれほどの人々が集まってくるのかが、

理屈抜きで分かった気がしました。

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