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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

4月22日イベント(2)・民族器楽重奏団「ヒャンギ」ファーストコンサート

4月22日午後2時からH2
京都市立堀川音楽高等学校の音楽ホールで
民族器楽重奏団「ヒャンギ」のファーストコンサートが行われました。
詩人の許玉汝さんにお誘いを受け足を運びました。
あいにくの雨でしたが、
会場はほぼ満員御礼で驚きました。
多くは在日コリアンの人々でしたがそれもそのはず、
この「ヒャンギ」(「芳しい香り」という意味)は、
「民族教育の過程で民族楽器に出会い、民族の心を受け継いだ在日3世、4世を中心に結成された京都で初めてとなる朝鮮の民族器楽重奏団」(パンフレット)なのです。期待感は高いはずです。
ちなみに京都朝鮮第三初級学校のクラブ「民族器楽部」がルーツだそうです。

私が朝鮮学校で感動を受ける光景の一つに
民族楽器のクラブで生徒達がすごく真剣に、そして生き生きと
民族楽器を演奏する姿があります。
その時、生徒達にとって楽器はただの道具ではなく
かぎりなくいとおしい生命を持ったものになっているのだと感じるのです。
遥かな故郷である朝鮮の山々から伐り出されてきた木で作られた楽器と
指や唇あるいは体全体が一体化し共鳴する。
そして何百年もの時を生き死にした祖先たちと交感する。
その共鳴と交感のよろこびが
端から見ている私の胸にもじんと伝わってきます。
そして何だか羨ましいという気持にさえなります。
日本人の私には、これまで触れえた民族楽器が殆どないのですから。
(その代わり木や水や風が何か遠く懐かしいものをいつでも奏でてくれますが)

このコンサートのプログラムはH_3
伝統的な曲である「トラジ」や「アリラン」から
情熱大陸」や「コンドルは飛んでいく」などの現代的な曲まで、
多彩な構成となっていました。
各民族楽器の特徴を活かすように選曲されていたようです。
ソヘグムやカヤグムやコムンゴやチャンセナブなどは
これまでも聴いたことがありましたが、
今回初めて聴いた楽器は「ヤングム」でした。
長方形の共鳴箱の上に鉄線を張り、フェルトをつけたバチで叩いて演奏するものです。
「洋琴」とも「揚琴」とも書くようですが、
ハープともピアノともつかないとてもとてもきれいな音色に感動しました。
このヤングムが独奏した「別れの曲」(朝鮮映画の挿入歌だそうですが、恋愛映画なのでしょうか)が余りにロマンチックで涙が出そうでした。
また今回は京都朝鮮中高級学校の民族管弦楽部も民謡「フェヤンニルリリ」を演奏。
数々の栄冠に輝いたプロ並みの実力派の演奏に唸らせられました。
そしてコンサートのラストは
オリジナル曲の「ヒャンギ」。
その名の通りとても香り高い美しい曲で胸に染み入りました。

民族という存在は私自身の中にはないけれど、
この会場に来ている人々はみな音色に民族の香りを吸い込み、
自分の奥にある民族のいのちを優しく触発されたんですね。
席を立ち出口に向かう人々の表情は
たしかに何か不思議に輝いている気がしました。

民族楽器は素敵です。
時を越えた魂の故郷の音が、今ここに生きる人々の心を励ますという奇跡は
何度目にしても私は胸を打たれるのです。