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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

魂の声 ──さとう大さんに

魂の声  ──さとう大さんに
                         河津聖恵

けさ京都のまちはほんの少し静かだ
投票日の昨日
私をみつめていた桜の花は
空に向き直り 吹き散らされていく

無数の花弁の行方に
不思議な光に照らされ佇んでいるのは
この四年間のあなた
交差点 路地 公園 畦道 高台 スーパー前の一角
その清冽な姿と思いが
京都のいくつもの片隅を
忍耐強くいきづかせてきた
思いを伝える澄んだ声は
通りすがる人々の あるいは
奥処で聞く誰かの
魂をひそかにふるわせ くりかえし励ました

弱肉強食ではなく
分かち合いの経済を──
危うい原発にたよらず
地形を活かした小さな水力発電を──
こんな社会は間違っている
今こそ声をあげるべきじゃないか……

どこにあっても声は輝いた
放つ言葉には
出会ってきたすべての人の思い
声をあげられない人々の声が
こめられていた
言葉は人間の真実を引き受けていた
介護者として深夜 その呼吸を見守った高齢者
誰にも相談出来ず自殺した若者や
ワーキングプアの苦しみを訴える労働者
子供を育てながら働く女性たち
過疎の村で生き抜く星のような眸をした人々
そして
交差点で大きく手を振ってくれた朝鮮学校生たち
つまり
現代の受難者があなたへ希望をもとめるまなざしに
声は内奥から応答していた

二五一九人からの付託は
声の輝きがたしかに聞き届けられたあかし
組織や利害という力におしつぶされることのない
魂の花の数
あなたの声が花開かせたのだ

苛酷な風に散らされても
昨日生まれた花びらは伝言となり
小さな魂の声を
四年後の未来へと必ず届ける
そこにはもう   
私たち一人一人が市民として声を輝かせる
このまちの本当の春がやって来ている