紫陽花が眼につく季節です。
この花を見つめていると何か意識を吸いこまれる感じがします。
色鮮やかなのになぜか宇宙の闇を感じるのです。
雨に打たれる紫陽花は不思議な光。
緑はくらがり。
花の周囲にはみえない闇がひしめいています。
毒のある花でもありましたね。
写真は近所で見事に咲いていた額紫陽花。
次のリルケの詩にある紫陽花は、鞠状の西洋紫陽花です。
薔薇色のあじさい
ライナー・マリア・リルケ(富士川英郎訳)
誰がとった この薔薇色を? それが集って
この花の中にあると 誰がままた知っていた?
はげかかった金メッキの器のように
まるで手摺れでもしたように あじさいはそっと薔薇色を解く
こんな薔薇色の代りに 何もそれが望まぬようにと
薔薇色は花のためにとどまって そして空から微笑んでいるのか?
香りのように 悠揚と 消え失せてゆく薔薇色を
天使たちがやさしく 空で その両手に受けるのか?
それとも満開期(さかり)の過ぎてゆくのを知らすまいと
花はたぶん それを放すのか?
でも その薔薇色の下で 緑はそっと窺っていた
そしてすべての秘密を知ったまま いまその緑が褪せてゆく。