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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

寒河江の夜

11日、映画の後で山形の友人とおちあい、

手作り市や県庁を見たあと、

寒河江へ車で向かいました。

道中、荘厳な夕焼けに圧倒されました。

こんな美しい夕空は見たことがありません。

(カメラではその美しさが半減しています。目と自然の関係ってすごい。)

寒河江では親族の家を3年ぶりに訪れました。

夕食をご馳走になりながら歓談のひととき。

地元の話題では盛り上がりながら、

芋煮や、あけびの皮のくるみの白和えや、

菊の酢漬けや、棒鱈煮や、古代米のご飯を頂く。

素材は殆ど貰いものか自宅で取れたもの。

とりわけ贅沢ではないが、

本当に心豊かな生活をしているなあ、と羨ましく思いました。

山形弁って温かい。

話しているうちにおのずと私もちょっとしゃべっている。

郷土に根付いた言葉が持つ体温に、くるまれるように・・・。

ちなみに寒河江は詩人黒田喜夫のゆかりの地です。

寒河江に来てみると、

その詩の奥に、この地のゆたかな自然の記憶がざわめいていることが、

よく分かります。

親族に黒田喜夫について尋ねたら、

高齢の人も含め、やはり誰も知りませんでした。

でもお母さんの故郷でもある幼少期を過ごした場所には、

今も黒田姓が多いそう。

まだご親戚などがいるのでしょうか。

今度ぜひ訪ねてみたいです。

山形での最後の夜に寒河江のホテルで、

大好きな夜の詩「人形へのセレナーデ」(「音楽家の友への五つの詩」)を

目に響かせたりしました。

最終行の「ガラスのガラスの」には心が震えます。

人形へのセレナーデ

                 黒田喜夫

小さな箱に人形がいた

箱から見ていたガラスの目で

箱の外は夜の部屋だ

夜の部屋からチェロが見ていた

黙りこんで窓の外を見ていた

窓の外には何があるのか

夜の部屋で人形にいう

人形よ 窓の外にも夜がある

けれど夜とともに世界がある

夜と世界のことをきみに話そう

それから言葉ではなくチェロはうたった

チェロは沈黙のあとの夜の唄を

夜と世界が見えるものの苦しみの唄を

人形よ きみの応えをきくまで

小さな箱のなかの

ガラスのガラスの人形の目に

                   

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