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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『日韓環境詩選集 地球は美しい』が刊行されました

『日韓環境詩選集 地球は美しい』(佐川亜紀・権 宅明編訳、土曜美術社販売)が刊行されImage979 ました。
「地球環境の危機の時代に東アジアの叡智を表す。日韓新時代を迎えグローバルな意識で共生の世紀を目指し、現代文明の行詰りに東洋の自然と思想を復活させる詩選集。」(帯文より)

日韓詩人370名の作品を収録。419頁の大冊です。
私も以下の作品で参加しました。
 
ビオトープの川
                                    河津聖恵

時はぼんやり流れる
それは淋しさへもときめきへも
静かな川のように分かれつづける
淋しさとときめきは透明な魚の鼓動
また次の私をふいに柔らかな賭けのようにつかむ

だが川の分かれ目で
緑濃い陰に一輪の花のたしかな影が落ちる
むきたての日輪を生んだ姿なき雌鶏の声なき声が煌めく
川がいのちを蘇らせ
淋しい水底まで明るく
水かさを増して未来へ向かうときだ

たとえばそれは
霧がはれるように花がひらくように
人が語り出すのに立ち会うとき
目を伏せがちにシャツの裾を握りしめ
あるいはタオルで乾いた額をことさら拭い
それぞれの生の中でとらえた小さな真実を
発芽させるように語るのに
心をのりだして耳を傾けるときだ

「草は草でも花の咲くのは抜かない。
 それは大体自分の指で選んでいる」
「川ゲラはちょっと戻ってきたけど
 ホタルまでは時間がかかる」
タンポポは日本と西洋の雑種が多くて迷う」

水の都のビオトープ
草取りフォーク(のようなもの)を根に当てながら
初老の庭師は木陰で呟くように語った
はにかむような方言は日を受けて
水の流れを変えるように抑揚した
立ち上がりふと目に入ったドクダミ
きちんと集められて整列している
そのように庭師の指に護られたのだ
遊歩道のそばで父親を見上げるような
ひとむれの優しさに私の川が輝く 

小さくとも真実は真実
ミライはミライ
またカツカツと音の始まった土を去りがてに
語るように心で思っていた

ビオトープ:小さな水辺に水草や抽水植物、小魚等を飼育する環境
*水の都:岐阜県大垣市