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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

改憲、ツェラン、血に映る血の美しさ

改憲制度ととのう→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110518-00000041-jij-pol

この国は戦争をしてもいいという方向へとついに本格的にうごきだしました。
これからまちがいなくアメリカの戦略、テロとの戦いに巻き込まれていくでしょう。
合法的に若者の血が流される日も来ないとはかぎりません。
どうしてこのようなことになったのでしょうか。

私たちが、過去に流された血を思い出さなかったからです。
この国がみずから流した、他者に流させた血の色を自分自身にひた隠しにしてきたからです。

…ぼくらは過去の現実の悪夢をもこれまで以上によく知りたいと願わなかったろうか。
人間の悲鳴を、ぼくら自身の悲鳴を、これまで以上に大きく、かんだかく聴きたいと願わなかったろうか? ごらん、この絵の下方の海面はみんなに、こうはっきりと断言するように迫っている。「血の海が陸地をこえて行く」と──生の丘は人口もまばらになり、灰色と化している。裸足で、戦争の亡霊が国々をさまよっている。この亡霊は猛禽のような鉤爪、それとも人間のような足指を持っている! この亡霊はさまざまな姿をとる、そして今? 流れただよう血の天幕(テント)。それが下に流れるなら、ぼくらは血の四壁やいくつもの血のきれはしの間に住むことになろう。血があくびをするときだけ、ぼくらはあたりを見まわして、血の匂いからつくられる別の、血に似た形状のものを眺めることができる。ぼくらも饗宴にあずかる。鉤爪の一本が血の井戸を掘り、そこにぼくら、ぼくら失われた者も、おのが姿を映しだしてみるようにと言われる。血の表面に映る血はこよなく美しい、と言われている……
             (「エドガー・ジュネと夢のまた夢」『パウル・ツェラン詩論集』)

この戦慄を覚える血の池地獄は、ツェランの幻視(死者がみずからの血を、血の井戸に映し出しています)であり、幻視であるからこそ、過去に起こったことの真実の姿なのです。

血の表面に映る血はこよなく美しい……その美しさを渇望する者が、今、この社会にいるのだとしたら。