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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

金満里作・演出、劇団態変『ファン・ウンド潜伏記』

昨夜大阪・難波の精華小劇場で観た Image1187
金満里作・演出、劇団態変による『ファン・ウンド潜伏記』はあまりに衝撃的でした。

たしか以前障害者プロレスというのがあったと思います。
それに擬せればこれは身体障害者演劇、障害者アートとでもいえるでしょう。障害者のみのアート集団です。

しかし「障害者」というのはいったい何なのか、Image1185
そんな言葉にどんな意味があるのかと
うちのめされるように思い続けていました。
レオタード姿のかれらの
異形でありつつ圧倒的な生命力と
無言のまま誇り高く示す生きる意志を見せつけられる中で。

時代や日常の意識や価値観のうすっぺらな光が逃げ去るような
小劇場のアンダーグラウンドの真闇の中
かれらの肉体はおおきな災厄を生き抜いた最もつよくしなやかなイキモノとして
這い、転げ回り、揺らめき、踊り続けていました。
ときには観客のただなかに入り
未知の彫像のように自身の美しさを誇示し。

こちらの無意識を触発する土俗的で効果的な音楽と美術(韓国の布が空中を行き交う場面など素晴らしい)のはざまで
抗日戦士の生きざまを追ったストーリー(「ファン・ウンド」とは金満里の実母の前夫「黄熊度」のことであり、実話です)が見え隠れしますが
歴史の闇に抗った主人公の意志は
出演者の全身にみなぎる力となっていました。

私は二時間半
在日と障害というテーマを超え
あるいはそのテーマから沸騰するように
人間とは何か、あるいは人間の真実とは何かという問いかける黒い光を
ずっと浴びていたのだと思います。

這い、転げ回り、揺らめき、踊る・・・
かれらがおのれの身を呈して創りだした時間はまた
五体満足者たちが疑わないシステマティックなこの世の動きを
下方で、決定的にうちくだいていました。

なお公演は今日を含めてあと三日続きます。
ぜひ足をお運び下さい。
14日19:30、15日14:00、19:00、16日14:00から
大阪なんばの精華小劇場にてhttp://seikatheatre.net/