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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

モンダンヨンピルチャリティーコンサート

21日から昨日23日まで、東京に滞在していました。A
三日間のあいだ、様々な方とお話しすることが出来、
4カ月ぶりの故郷で大変充実した時間を過ごせました。

22日は
「なかのZERO大ホール」の
「モンダンヨンピルチャリティーコンサート」を見にいきました。
会場は超満員で、大勢立ち見も出ていました。
三時間近くもの公演となりましたので、立ち見の方は大変だったと思います。

「モンダンヨンピル」とは、韓国語で「ちびけた鉛筆」という意味。B
東日本大震災の被害を受けた朝鮮学校を支援するために生まれた
韓国の朝鮮学校支援団体です。
俳優クォン・ヘヒョさんによるモンダンヨンピルの紹介もかねたコンサートのCMがありますので、ぜひご覧下さい。
→ http://www.youtube.com/watch?v=C58w1gs-zSc

とにかく本当に熱く感動的なコンサートでした。
生徒達の美しい合唱と民族舞踏、
激しく胸を打つロックにダンスにフォーク、
そして各演目の合間にはクォンさんの優しい人柄があふれたトーク・・
観衆も自然と一緒にリズムをとり、唱和していきました。

私はモンダンヨンピルの歌はじつはじっくり聴いたことがなかったのですが、
今回はハングルと共に日本語字幕もバックに映し出されたので、
とても助かりました。

歌詞やインタビューの台詞の訳を眼で追いながら、
また通訳の言葉をききながら色々考えさせられていました。
朝鮮学校を知ることは、私達の歴史を知ること」
「心の銃を下ろそう」
「平和の共同体を作ろう」
他にもたくさんありましたが
たとえば上の言葉は私自身に突き刺さるものでした。
朝鮮学校の生徒への励ましでもあるそれらが、
他ならぬ私自身への呼びかけとして響いたからです。

2010年に国策によって浮上した
政府による朝鮮学校の高校無償化からの排除というとても悲しい事件。
私たちは何度も文科省内閣府に要請に行き、
ペンや声で訴え
希望を抱いては打ち砕かれてきました。
何よりもそこで見聞きする生徒達の悲しみや悔しさの測り知れなさと
この国の人間的な愛の薄さと冷酷さと
そして自分自身の無力さにいたたまれない日々を過ごしました。

けれど私たちと同じように無償化除外の痛みを感じているはずの
このモンダンヨンピルのアーティストたちの
強さと明るさにはただ圧倒されるばかりです。
必ず人間的な力は勝利するのだという確信が
かれらの歌声にも表情にもみちみちていました。
かれらのパワー、つまり自分と人間への信頼の力を感じたことは、
じつに新鮮で大きな勇気をもらいました。

かれらは無償化除外問題を通して
自分たちの民族の知らなかった歴史を知ったそうです。
そして朝鮮学校を訪問し、生徒達と交流する中で
一緒に歩んでいこうと決意したのでした。
日本以上に反共意識のつよい韓国で
残念ながら一般的には朝鮮学校
同じ民族の学校というより「敵の学校」とみなされているようです。
かれらはそのような状況の中でそれぞれの社会的な立場を持ちながら
自分たちが知った学校の真実をみずから伝えようと努力してくれました。
すべての行動は、学校の子供たちや先生からかれらが受けた感動の中から
自発的に生まれたものです。
コンサートの間ずっと
一人一人のアーティストの愛情あふれる心と人間的な勇気が私の胸にもせまってきて
おのずと頬に涙がこぼれました。

韓国人であるかれらは無償化問題から朝鮮学校の存在に初めて気づき
自分たちの民族の歴史をあらためて知ったのですが、
では私たち日本人はどうでしょうか。
同じ日本の地で共に生きる仲間である朝鮮学校の生徒達の痛みにC
見て見ぬふりをするのは
人間としてあまりにも悲しいことではないでしょうか。

この一夜
冷たい国の闇の中にぽっと灯った温かく美しい時間は
私の中にも永遠の喜びとして残された気がします。