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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

君が代条例のための戯れ歌

うたが強いられるという。
おのれの歌を奪われるという。
魂が殺害されるという。
理念と理想がひきずりおろされるという。
死者が見せしめにあうという。
言葉がぬけがらになるという。
未来が難破するという。
つまりは現在が果てしなく虚像化するという。

あるいは生きているふりをして時折ぴかぴかひかる死滅が
この社会を、不気味な青白い雪のようにうっすら覆っていく。
生きながら死んでいく大人を脇にして
子供たちもまた瞳と膝頭から急速に老いていく。

やがて生きながら死んで立ち尽くす大人たち。
この世はさむざむとだだっぴろい体育館だ。
空に受け止められなかった歌という歌は
次々するどい氷柱となり
雪げむりをあげて子供と大人の間に突き刺さってくる。

そしてついに死の天使が進み出る。
もっとも死んでいる天使は
死の膨大なエネルギーを眉間に集め
眼は欲望の真っ青な光でみちみちているのだ。

天使はいう。
こどもたちよ、元気がありませんね、
口をおひらきなさい、
おクスリの時間ですよ、
この国のデントウとブンカをまもるために
音符の白い錠剤をおのみなさい、こわくなんかない、
大きな声もでますよ、体の熱がどんどん下がるけれど
やがてきみたちの中の灰色の闇がつめたく燃えるんですよ、
光なんかいらなくなりますよ、
光がなくても育つ、この世の雪がふればふるほど育つ
氷の王子さまと雪の王女さまになるんですよ──