うたが強いられるという。
おのれの歌を奪われるという。
魂が殺害されるという。
理念と理想がひきずりおろされるという。
死者が見せしめにあうという。
言葉がぬけがらになるという。
未来が難破するという。
つまりは現在が果てしなく虚像化するという。
あるいは生きているふりをして時折ぴかぴかひかる死滅が
この社会を、不気味な青白い雪のようにうっすら覆っていく。
生きながら死んでいく大人を脇にして
子供たちもまた瞳と膝頭から急速に老いていく。
やがて生きながら死んで立ち尽くす大人たち。
この世はさむざむとだだっぴろい体育館だ。
空に受け止められなかった歌という歌は
次々するどい氷柱となり
雪げむりをあげて子供と大人の間に突き刺さってくる。
そしてついに死の天使が進み出る。
もっとも死んでいる天使は
死の膨大なエネルギーを眉間に集め
眼は欲望の真っ青な光でみちみちているのだ。
天使はいう。
こどもたちよ、元気がありませんね、
口をおひらきなさい、
おクスリの時間ですよ、
この国のデントウとブンカをまもるために
音符の白い錠剤をおのみなさい、こわくなんかない、
大きな声もでますよ、体の熱がどんどん下がるけれど
やがてきみたちの中の灰色の闇がつめたく燃えるんですよ、
光なんかいらなくなりますよ、
光がなくても育つ、この世の雪がふればふるほど育つ
氷の王子さまと雪の王女さまになるんですよ──