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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩にとって孤独とはなにか(四)

私はどんな大文字の他者としてのコトバによって支配されているのでしょうか。
それが遙かな昔から
(まるで阿鼻地獄のように?)
無数の他者が語り、囁き、黙り、うめき、叫んできたものだとすれば、
今私が詩として書く言葉は、
その他者たちの、
無意識の闇に流れているイキモノのようなコトバと
きっと関わりがあるに違いありません。

けれどどんな関わりがあるのでしょうか。

私が日常の言葉で満足できず、
詩を書きたいと願い続けるのは、
そのような大文字の他者としてのコトバの流れが
体と心をつらぬきやまないからではないかと思うのです。
大文字のコトバの流れはきっと、
感じとれられないほどかすかな
しかし何か生命にとって本質的な振動を
体と心に与え続けているのでしょう。

つまりこれまで生き死にしてきたすべての他者たちのコトバは、
ざわめきや声に似たものとなって、
深いところで人間を揺さぶりつづけているのではないでしょうか。
自分たちのだめに語れ、書け、叫べ、
と命じているのではないでしょうか。

あるいはもう黙れ、と。

すぐれた詩の言葉とは
痛点のように私の存在のツボをさぐりあてる言葉であるようです。
私を伺い知れない大文字のコトバの振動に共振させ、
私をコトバ自身へと解体させてしまうようです。
けれどすぐれた詩とは
不安を越えて、陶酔であるのはなぜでしょうか。

それはきっと、
詩によって私が溶け込ませられていくコトバの流れとは
ひどくなつかしい、
私自身もまたそこからやって来た
深くざわめく闇の流れだからだ、と思うのです。