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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

中国吉林省・延辺朝鮮族自治州をめぐって�G8月23日後半

さあいよいよ長白山ジープサファリです。018

乗るまえに運転手にまず「外国人みたいだが、保険はかけているか」と訊かれ、予感はあったものの、
出だしから急カーブが続き映画のようなタイヤの悲鳴が上がり、
上から降りてくるジープとすれ違うたび鋭いクラクションが響きわたり。
車はためらいもなくどんどん高く登っていきましたが
ふとガードレールの方を見るといつしか忽然となかったりして…
後部座席で丁章さんの小さな坊やが上げる悲鳴が
乗っていた大人全員の本音を代弁していました(笑)。
私の席はシートベルトがなぜか見当たらず
必死でドアの取っ手にしがみついてました。

といいつつそんな中で
すれちがう運転手が揃ってみな同じ黒いサングラスを掛けていたのが何だか面白く思えて
ちょっと笑ってしまいました。
なぜかみんな隣国の亡くなった指導者によく似て見えたんです。
日本のテレビではサングラス姿でいつも独裁者と紹介されていたけど
たんに高地で視察する際の紫外線よけだったのではないでしょうか。
たしか白頭山生まれでしたし。019

しかし何とか無事故で頂上までたどり着きました。

四方に火山独特の荒涼とした山々が見えますが
しかしまだ天池の姿は覗けません。
息も荒くかなり登り坂をのぼっていくと
ようやく青々とした神秘的な女神の姿が!!
何か全てを吸い込み浄化してくれるような見たこともないような青は、
まさに女神のまなざしの色…021
湖面に不思議に煌めく水紋はまさに女神の無垢な吐息…

すごい感動でした!!
頭が真っ青になりました!!!

頂上の各所では、多くの中国人観光客があと一歩下がったら命がなさそうな岩の上で
果敢にポーズを撮っていました(とくに女性は一生に一度の記念のために超勇敢!!)。
じつは高所恐怖症の私は
湖の美しさへの感動で恐怖をおしころすのがせいいっぱいで
あまりいいアングルの写真は撮れませんでした。Imgp0507

耳を澄ますと周囲に聞こえるのは中国語ばかりで
朝鮮語は余り聞こえてきません。
さすが全国的な観光地だけあって、お客は間島地方だけでなく、全土から来ているんですね。
ここまで来る日本人はいないだろうなあーと思っていたら、
ふと後ろで日本語が。
「母さん、もう休めよ。」
「そうかい。以前来た時よりも人が増えたね。」
四十代くらいの男性とお母さんらしき杖をついた女性。
お母さんにこの山に何か思い出があって再訪したのでしょうか。

私の方は韓国人に間違えられたのか
写真を撮ってあげた中国人のカップルから
カムサハムニダ〜!!」と言われました。

ふとある方向を見やるとImgp0506
隣国の朝鮮民主主義人民共和国側が見えました。
国境は湖の中を通っているそうです。
もちろん向こうでも天池は同じように聖地としての観光地。
白い遊歩道が岸辺へ降りていました。
あとでデジカメで撮った写真を拡大したら
肉眼では確認できなかった多くの人々が岸辺で憩っていました。
(さらに性能のいい丁章さんのビデオでは、靴を脱いで足を湖水に浸している姿も確認できたそうです。)
つまりあたりまえですが
彼地の人々もこの湖水のすばらしさに、
同じ時に同じように感動していたのです。
それなのになぜ国境というものがあり、国家と国家の対立があり、
人と人が故意に分断され
同じ感動を分かち合う機会が奪われているのでしょうか。
女神の美しい青い体を切り裂いてまで。

さて、頂上のお土産物屋さんを少し冷やかしてから
ふたたび下りのサファリがスタート。
今度はシートベルトがあったので少し安心しましたが、
途中パンクして傾いた大きなトラックを見て
どきっとしました。
ガードレールやっぱりないし。

でも敏腕運転手の絶妙なハンドルさばきで
映画のラストのようにかっこよくジープは降車場に無事到着。
ずっと待っていてくれたわれわれの運転係の林さんと合流し、
帰路に着きました。
途中、温泉卵以来何も口にしていない空腹に耐えられず
田舎町の食堂でちょっとした会食。
ここでも「これ何だろうなあ」を色々注文していたら、
卵焼きやら豆腐やら野菜炒めやらで超豪華な間食になってしまいました。
しかしいつものようにとても安かった。
七人分で二千円も行かなかったんじゃないかな。

そして車は延吉をめざし、Imgp0510
車窓には夕暮れのとうもろこし畑や山々が過ぎていきました。 時に道ばたに牛が歩いていてびっくり(写真をよく見るといます。)

そしてある一瞬、とても素敵な光景に出逢いました。
畑仕事帰りの母親と子供たちが
父親らしき人の運転するトラックの荷台に乗っていたのですが、
夕日に照らされたお母さんの笑顔がもの凄く優しく美しかったんです。
赤ちゃんを抱いて前の子供に笑いかけていたのですが、
まさに人としての一日の営みと生に満ち足りた、充足の笑顔。
私たちがどこかで置いて、忘れてきてしまった笑顔だ、
こんなところにあったんだ、とハッと思いました。
「目カメラ」で撮っただけでお見せできないのが残念です。

延吉に着いたのは午後八時。
この夜はもう遅く疲れてもいたのでホテルの中のレストランで食事をし
早めに就寝しました。
次の日はついに、尹東柱の故郷、明東村へ行くのですから。