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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩「歌 ──五月二日、京都・詩仙堂の緑に」

  ──五月二日、京都・詩仙堂の緑に
                            河津聖恵

緑がふりそそぐImage1298
ためらいもなく
歌がふりそそぐ
きこえない
星の破片のうた
ひるがえりまきかえる
弔鐘
ラッパ
天使のことづて
空にみち
空が胸いっぱいになり
今歌が地上にふりそそぐ

目はさびしい耳だった
緑がふりそそぎ
歌がふりそそいで
歌をさがし続けていた としる
いつからか
黒い虹や
赤い海や
ぎらぎらとした沈黙の砂金に
つらぬかれ
つぶされ
目は目だけでことばもなく
旅をしていた
だが今
歌を響く
歌を飲んでいく
神の明るい涙腺が 

みどりはかなしみ
かなしみはみどり
みどりはよろこび
よろこびはみどり──
世界は光を受け
小さくちいさく揺すれる
小さなちいさなリフレーンだ
楓の緑から
空の青
藤の花の白をもぐって出て
池の水を抱いて放ち
ふと鳥の影を落として
また
光が眠るあの梢へと
うたいあげられる歌
歌だ
ふたたび空を呼んで