#title a:before { content: url("http://www.hatena.ne.jp/users/{shikukan}/profile.gif"); }

河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

9月5日付朝日新聞社説

社説 朝鮮学校 

          日本社会の度量を示そう

 在日朝鮮人の若者たちが「なぜ自分たちだけが取り残されるのか」と、つらい思いで2学期を迎えている。
 朝鮮高級学校をめぐり、文部科学省の専門家会議が、授業料無償化の学校にふくめるかどうか判断するための基準をつくった。高校の無償化は4月に始まったが、朝鮮学校は「日本の高校課程に類する」ことを確認できないとして、先送りになった。
 示された案は、授業時数や教員について専修学校なみに水準を求め、支援金がすべて授業料減額に使われるよう財務の透明化の注文をつけた。他の外国人学校とともに、文科省が定期的にチェックする仕組みもとり入れる。
 一方で、個々の具体的な教育内容は判断の基準にしない、とした。日本の学校とは異なる方針の下で教育を行うことを、認めようという考え方だ。
 時間がかかりすぎたとはいえ、学校制度の外に置かれてきた外国人学校をきちんと位置づけ、多文化の学びを国が支援してゆくための、客観的で公正なモノサシができたと言える。これを使い、4月にさかのぼっての無償化を速やかに実施すべきだ。
 ところが文科省民主党内の意見を聞くとして、またも結論を先延ばしにした。管直人首相の指示だという。
 党内には、経済制裁を続けているのに、その北朝鮮の影響を受ける学校を支援すべきでないとの意見がある。拉致被害者家族からも「対北朝鮮で日本が軟化したと取られる危険が大きい」と反対がある。先送りは、こうした意見にも配慮したのだろう。
 しかし、子どもの学びへの支援と、拉致問題への対応とを、同じ線上で論じるのはおかしい。高校無償化の支援対象は学校ではなく、生徒一人一人だ。「外交上の配慮で判断すべきでない」というのは、国会審議の中で示された政府の統一見解でもある。
 教育内容を問うべきだという指摘もある。確かに金正日体制への礼賛は、私たちの民主主義と相いれない。
 だが、同じ町で暮らす朝鮮学校生に目を転じてみよう。スポーツでは地域の強豪校でもある。北朝鮮の思想を授業で学びながらも、生徒や親の考えは一色ではない。バイリンガルの能力を生かすなど、様々な分野の担い手として活躍する卒業生もたくさんいる。
 ここは日本社会の度量を示そう。
 多くの朝鮮人が住み、北朝鮮を支持する人がいるのは、歴史的な経緯があってのことだ。祖国を大事にする価値観を尊重し、同じ社会の一員として学ぶ権利を保障する。そうしてこそ、北朝鮮の現状に疑問を持つ人との対話も広がり、互いの理解が進むだろう。
 そのうえで、日本で生きる朝鮮人としてどんな教育がよいか、今の朝鮮学校でよいかどうかは、彼ら自身に考えてもらうべきことだ。