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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

南北間格差in左京区

京都も桜がそろそろ満開の気配です。Image1257

桜の気配の下の「戦い」の中で
普段めったにできないとても貴重な体験をさせてもらっています。

昨日は京都市の南北に長い左京区を、車で縦断しました。
私は京都に住んでもう長いですが、左京区の北の端を訪れたのは初めてです。

南の方では考えられない根雪が固まった山々の間の
九十九折りの道を走り続け
滋賀県福井県に接する最北端のある村を訪れて驚きました。

これが同じ京都市なのかと。
家紋のような印をつけた合掌造りの家々が並んでいる。
けれど多くは、戸口の前に雪が凍てつき、人が住んでいないと分かります。
窓も木板で閉ざされている。
カーテンを閉め切っているそこに、誰かいるのだろうか。

このような村を限界集落というのでしょう。
バスも通りません。スーパーもありません。 人もいません。
マイクで訴える声は、春のうららかな青空に響き渡るだけです。
合掌造りの屋根たちが、しんと耳を澄ませていますが
どこかで誰かがきいているのでしょうか。

しかし何度も足を運んできたS君の声をききつけ
おばあちゃんやおじいちゃんたちが出てきました。
みんな自給自足をして故郷を護って生きている人々です。
こちらを嬉しそうに見つめる目が
星のように澄んでいて、何だかどきっとしました。

若い人が戻って来ない。
新参者もすぐに出て行ってしまう。
畑の作物や唯一の楽しみに育てている花を、鹿や猪が食べてしまう。
いけすの美しいイワナを猿がとってしまう。
病気になっても、用事があっても、身動きがとれない。
滋賀県のマイクロバスがすぐ近くまで走っているのに、京都市のこちらには寄ってくれない。

つぶやくように、静かに訴えかけてきます。

でも一番どきっとしたのは、畑作業をしていたあるおじいちゃんが
指差した青空をくっきり走る太い送電線。
福井の原発から来ているものだそうです。
限界集落の住民たちの苦境や不安をあざわらうかのように
京都中心部や大阪方面に向かって。

そう、福島と同じ事故が起これば、ここはたしかに30キロ圏内に入るはずです。

南北間格差とは決して世界や国の単位であるものではなく
左京区という小さな行政単位にも、人知れず確実に存在していました。