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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『環』(藤原書店)51号に「詩獣たち」第八回、「風の痛み」を書いています

『環』(藤原書店)51号にKan
「詩獣たち」第八回、「風の痛み」を書いています。
今回は、植民地時代に日本へ渡航し、解放直前に福岡刑務所で獄死した詩人、
尹東柱(ユン・ドンジュ)をとりあげました。

このブログでも記事を書きましたが、
私は八月下旬に、中国・間島省にある詩人の故郷明東村をたずね、
詩人の墓前で、日中の詩人たちと朗読会をひらき
オマージュ詩を読みました。
その時、
優しく憂えるまなざしのような空の
深くもどこか翳った青色に見守られつつ、
墓地の草々を何者かの透明な意志のようにそよめき渡る
無数の風に包まれながらたしかに感じたのです。
まだ詩人は死んでいない、と。

「詩獣は、福岡刑務所で絶命する瞬間、「何の意味かわからない」叫びを一言上げたという。それは暴風が与えた最後の痛みであり、生きたいという意志でもあり、朝鮮の独立や故郷への思いを表現する言葉でもあったろう。そして何よりも詩への思いが込められていたろう。耳を澄ませば今も遺された言葉深くから叫びは響く。いまだ吹きすさぶことを熄めない歴史の不吉な風の音も蘇る。その時読者もまた詩獣となるだろう。東柱の死後いまだ訪れていない「時代のようにくるであろう朝」を、みえない闇の中で傷の痛みを抱えながら待ち続ける「最後の私」であるだろう。 」