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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

大文字の他者とはだれか(二)

大文字の他者シニフィアン象徴界
斎藤氏によればそれは意味を生み出すものではあっても、意味そのものではないといいます。

ラカンはたとえば、こんなふうに考えた。こころは言葉でできている。そして、言葉にはもともと意味などなく、ひとまとまりの音にすぎない。言葉は記号みたいに、直接に何かを示すことはしない。つまり、言葉はものの身代わりじゃない。」

言葉は他の言葉との関係性と語られる文脈で、その「意味」を生み出す、というのです。
例えば、「犬」という言葉は、「?」「馬」「牛」といった、他の言葉と関係しているから、犬という意味になる。だから「犬」以外の動物の名がなければ、犬も存在しない。また、どんな文脈で語るかで、「犬」は人をののしる言葉になることもある・・・。

そのような言葉だけの(つまりものの身代わりや意味の表現ではない)、シニフィアンの世界=象徴界とはどのようなものなのでしょうか。

「問題は、この言葉だけの世界のほうにある。言葉だけの世界、つまり「象徴界」のメカニズムを、僕たちはじかに知ることはできない。だからそれは「無意識」と呼ばれたりもする。そして、無意識の中での言葉どうしの関係が、人間の欲望を生み出したり、あるいは病気の症状をもたらしたりしているのだ。」

象徴界の未知なメカニズムが、人間という言葉を持った存在に、欲望や病気の症状をもたらすといいます。そのメカニズムの意味や目的は分からない。味方なのか敵なのかも分からない。しかし私たちはそれに支配され、あらかじめ屈服させられている。それほど強力な「なにか」、あるいは「だれか」。

象徴界が関わる「病気の症状」について、最近ある人から説明してもらったことがあります。
しかも病室で。
薄い光の当たる白い壁を見つめながら。

「この壁が、壁以外のものにならないように、しっかり固めるには、象徴界という言葉の力が必要なんですよ」
「でも、ふだん私たちが日常で使う次元、つまり想像界の言葉では、固める力が足りないんです。」
「こちらの言葉の力が弱まってしまえば、壁は壁以外のものに無限に変わり、現実界という狂気の世界が始まるんです」

象徴界想像界現実界
それは三つのことなる世界ではなく、
たとえば「壁」という対象の「みえ方」の違いを言っているらしいのです。
私たちの言葉の力いかんによって、それはしっかり固まりもするし、おどろおどろしくうごめき始めもするし、詩のように輝きもする、ということでしょうか。

しかしその象徴界の「強い力」とは何でしょうか。
言葉の関係性だけで、音のネットワークだけで出来ている象徴界
だからこそ網のようにしなやかな無限の力を持つ、ということでしょうか。

しばらく考えてみます。