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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「続・第三の開国」

21日(金)の朝日新聞朝刊にオピニョン「争論」が掲載されていました。
これは何度か目にしたことのある興味深い企画。
紙面を大きく使い、ある問題に対する識者二人の賛否の論を左右に配置します。
対照的な意見が、人となりの違いまでも浮き彫りにするようで面白く読めます。

今回は「第三の開国」の第二幕(第一幕は18日に掲載されたようですが、未読です)。
今話題になっている「環太平洋パートナーシップ」(TPP)への参加を念頭に置いて、年初に菅直人首相が記者会見で強調した「第三の開国」に○か×か。
「内向き」は悪いのか? 地域社会を損なうか? 農業を強くできるのか?
がメインの争点となっています。

伊藤元重さん(東京大学教授、国際経済学)は○。
佐伯啓思さん(京都大学教授、社会経済学)は×。

私は漠然と○だけど×だなあ、×だけど○だなあと感じていたのですが
どうしてどちらに対してもためらうのかが、両者の見解を読んでいて分かった気がしました。

伊藤さんの意見でまずうなずいたのは
近い将来日本の周囲に巨大な経済規模の国と地域が三つ(注:中国、インド、東南アジア連合)が誕生する筈で、その時になって慌てないように今から国内の仕組みを開放型にしておくべきだというところ。
これにはもしかしたら統一された朝鮮半島という第四の地域も想定されるかもしれませんね。

私はTPPって残留農薬とかも怖いし、日本の農業を破壊するとばかり見ていましたが
たしかに周囲の国が互いにがっちり経済でスクラムを組むようになったら、大変。何せよ開放する準備だけはしておかなくてはならないんですね。

対する佐伯さんは、そのところはすべて開けばいいものではないと少し慎重。
グローバル化が進むと、どうしても自分のアイデンティティにもとづく価値観が必要になる。それが掴めれば「どの分野で国を開き、どの分野で閉じるか」という戦略も見えてくるから。

佐伯さんの意見にもうなずくのですが、いずれにしても国を開くというのは、島国の日本にとっては大きな賭けで、大変な勇気がいるものなんですね。
私は、アイデンティティはきっと他者に出会ってから見えてくるものだから、まず開いてみては、とも思う。もちろん何のために開くのかという問いかけは、そのつどしっかりと議論する必要はあるけれど。

介護分野での外国人労働者受け入れ問題は、足腰が弱ってきている姑を抱える私としてはとても切実。
伊藤さんは介護のために仕事を辞めたりする女性のためにも、外国人は入れるべき、
それは共同体を壊すことにはならない、むしろ地域の閉塞感やしがらみに風穴をあけることになる、と肯定的。
佐伯さんは外国人に頼るのではなく、日本人が自分でやる体制を整えるのが先決だ、ととりえず否定的。

私は、現在のこの国で悲鳴をあげている女性たちのために、早く外国人の介護者を入れてもらわなくてはと切実に思います。
遠隔介護など、本当に大変ですから。
一方で、この国の男性が介護というものに対し、積極的に自分が関わろうとするほどの情の深さが、今の段階でどれだけあるか、ちょっと疑問。むしろ介護を契機に、老いていく親や女性という他者に真剣に向き合って変わっていってくれたらいいなとも思う。

今、私たちはやむをえない形ではあれ、国を開くしかないのではないでしょうか。
アイデンティティの確立、日本人自身が介護する体制、内需中心の経済、自分自身の脱成長といったモデルは一方で描きつつも、よかれあしかれ、これまでとは違う国になるという新鮮な覚悟が必要な時に来ているのは事実です。